県立烏野高等学校、事務職員です。【５】

213　追尾 ページ13

「映画見たい」

　「何の映画？」

　「これ」



　昼を食べモール内をぶらぶら歩いていると映画館前を通りかかった。

　そういえばついこの間上映された奴で見たかったのがあった。

　私が指差したのはホラー映画。

　怖がりではあるけど怖いものは見たい。

　でもまだ明るいし周りに人がいるなら大丈夫だと思う。

　逆にこの映画を１人で家で見るのは無理。



　「ええー……」

　「ダメ？」

　「いいよッ！！」



　乗り気じゃない及川だったけど私のお願いに弱いことは前から分かっているからね。

　ちょっと悲しそうにすればお願い聞いてくれる。悪い女だね私。



　「映画まで時間あるし服見たい！」

　「オッケー行こうか」



　チケットを先に取って再びぶらぶら歩いていく。

　服屋はもちろん可愛い雑貨屋や家具屋があちこちある。

　１日では回り切れないくらいだ。









　「Aちゃんこれ似合いそう」

　「あ、可愛い」

　「試着してみなよ！」

　「してみる」









・






　「ふっつーにデートしてるぜ」

　「それな」

　「及川さん楽しそうですね」




　及川と佐藤がショッピングモール内を歩いている中、その後ろを追う３つの影。

　正体はチームメイトの花巻、松川、国見だ。

　普段であれば及川の交友事情や色恋事情などには特に興味を持たないが、相手が佐藤となれば変わってくる。

　ただ応援してやろうという気持ちはほとんどなく、面白半分興味本位による尾行だ。





　「あ、映画見るみたいだぜ」

　「ホラーですね、及川さん嫌がってますね」

　「うわAさんあざといな。及川前からAさんのお願いに弱いよな」

　「Aさんも結構この世の終わりみたいな顔してお願いするときあるよね」

　「そりゃ聞かないわけにはいかないよな」

　「あ、動きましたよ」

　「俺らも見る？」

　「せっかくだし見ようぜ後ろの席で」

　「でも上映時間いくつかありますよ」

　「絶対この時間。そして席は多分ここ座ると思うから俺らはここ」

　「何で分かんの怖」

　「勘」

　「怖い」

　「じゃ、チケットも買ったし俺らも行きましょ」

　「おう」

　「あの２人どこ行った？」

　「さっきあそこの服屋入ってったぞ」

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