ep1 りんご村の変わり者 ページ2
ここはイーハトーヴの丘の最北端に位置する小さな村、りんご村。
真っ赤で大きくて、かぶりつけばあまーい果汁が口の中に広がる、星みたいに眩しくてつやつやなりんご、『いちばん星』が名産品。
村の人たちは噂好きなのが特徴。
最近人気の噂は、まだ５歳の女の子、ロイヴィアのこと。
ほら、あの街角の街頭の下。
「ね、アーノルトさんちの子、変なんですって？」
「そうらしいのよ。なんでも、この村では村長でさえも読むことが困難って言われている魔法の書をたった30分で読んでしまったんですって。それ以来家からは一歩も出ていなくて、本の山に囲まれて、お風呂にも入ってないって噂よ―」
こうして噂は広がっていく。
さて、ロイヴィアって一体どんな子なんでしょう。
彼女は村で一番小さなりんご農園のある、レンガ造りの小さな家に、ロイヴィアとお母さん、お父さんの３人で暮らしています。
１階はご飯を食べたりする部屋と、家族でくつろぐ部屋、お母さんお父さんの寝る部屋。
そして２階にはロイヴィアの部屋である窓つきの屋根裏部屋があります。
ロイヴィアは夜は眠りません。ずっと、天井にある窓から星空を眺めているのです。
まばらに散った星々はきらきらと光っていて、まるで宝石箱のよう。手をのばせば届きそうなのに、本当は人生をかけても届かないところにあるのだろう。
ロイヴィアは空に手をかざします。
そして、自分の住む村、丘、星について考えます。
この世界をこんなに狭くしてしまったのは、星の闇だと魔法の書に書いてあった。
星は明るいのに、闇。私はまだ出会ったことがないから、それがどんなものかは分からない。
まだ５才のロイヴィアには、不思議に思うことがいっぱいです。
私の住むイーハトーヴの丘だけでも、分からないことが沢山ある。きっと世界はここよりもずっと大きくて、沢山の知らないことが待ってるんだろうなぁ。知りたいなぁ。
そして、大きなあくびをひとつ。
ロイヴィアは美しい朝焼けを織りなす空を横目に、目を閉じるのでした。
☆☆☆＊☆☆☆
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作者名：冬花 | 作成日時：2017年9月17日 11時
