ニフラーだった私の過去

家 ページ3

「…A。A。起きなさいA」

『……うぅ…』

ゆっくりと目を開くと、目の前は水色だった。それをばさりと横に退けると、いつもの私の部屋が現れる。

変な夢を見ていた。いや、変な夢というのも確信がない。ただ、何か夢を見ていたなぁというぼんやりとした記憶があるだけだ。

「A？起きてるなら返事しなさい」

『…うん、起きてるよ…起きてる』

ぼんやりと答え、先程ばさりと横に退けた水色の毛布を整える。それから、服を着替え髪を縛る。

髪を縛ると、自分からは髪が見えにくくなる。


母の髪は茶色で、兄も茶色の髪だった。けれど、私の髪だけが金色だった。1人だけ金色の髪だったから、どうしても母と兄に比べてしまって、その度に憂鬱な思いをしていた。

髪だけではない。私は、瞳の色も母や兄と違っていた。母と兄の瞳は茶色なのに、私は青色だった。

あなたは本当にお父さんにそっくりね、と私の髪に触れながら、悲しそうに微笑んで母が言っていたのは忘れられない。

ちなみに、父のことはほとんど教えてもらったことがない。母は父のことを忘れたがっているようで、父のことを聞こうとすると、きまって顔をしかめるか機嫌が悪くなった。

だから、父のことを聞いたことも、教えてもらったことも1度もなかった。

それでも、私はすごく幸せだった。十分すぎるほど幸せだった。


だから、だろうか。


砂で作った建物が波によって壊されてしまうかのように、自分が"幸せ”だと思っていた時間は案外速く終わるものである。



久しぶりの更新です。
遅くなる遅くなると言っていますが、ここまで遅くなってしまいました。本当にすみませんでした。

家2→←始まりの物語

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す