第0話 初出勤 1 ページ2
太陽暦佰九拾八年 東京…
今日から第八特殊消防隊に配属されることになったはいいが、今はそれどころじゃない。
初日から、遅れてしまいそうなのだ…。
「すいません、失礼しますッ」
駅から溢れ出てくる人の群れに揉まれているうちに、駅の階段の近くまで来てしまった。焔ビトだ！
人体発火だよ、早く降りろ！、そんな声がホームの方から聞こえてくる。
その声に反応して階段を駆け上がると、まさに焔ビトが電車から降りてくるところだった。
ぬぅっ、と出てきた手が力強くドア縁をつかみ、ぎゃぁぁぁゃぁぁああああ！！と叫び声をあげながら焔ビトが顔をのぞかせる。頭蓋骨のような頭を見て顔をしかめる。
《なんの変哲も無い人が急に発火してあんな姿になっちゃうんだ…》
そんなことを考えると一刻も早く眼の前の人を鎮魂して苦しみから解放してあげたくなった。
「『痛いよな/ね…、すぐ楽にして…、ん？』」
全く気づかなかったが隣に私と同じくらいの男の子がいて、全く同じことを言っていたようだ。
「特殊消防隊だ‼道を開けなさい‼ほらっ‼どけどけ‼」
バチリ、と目が合いお互いに固まっていると驚くほど大きい声が聞こえてきた。どうやら特殊消防隊がきたらしい、それも第八の。
「焔ビトを確認！各員 戦闘・鎮火体制！」
「「「了解！」」」
「君たち、こんなとこいないで早く退がって！」
一番体が大きい人が私達に腕で後ろへ行くように促す。
「あれ？君たちは…。」
メガネをかけた瞳孔が開き気味の人が私達を見て何かに気がついたように呟くが、注意されすぐに戻って行ってしまう。
「シスター、祈りを始めてください」
「はい！ 炎ハ魂ノ息吹… 黒煙ハ魂ノ解放…」
「特殊消火弾発射！」
「コア殲滅用バイルバンガー用意！」
特殊消火弾で泡に包まれた焔ビトががぁぁぁああ！と叫びながら巨大な炎の球を放つ。
『あっ！』
「あぶっ…！」
すると、黒髮の女性が前に出て手を前にかざして炎をかき消す。
「炎をかき消した⁉」
女の人がすぐさまそこを退き、大きな人が前進する。
「灰ハ灰トシテ…「其ノ魂ヨ…」炎炎ノ炎ヘ帰セ」
武器を焔ビトの心臓部に当て、トリガーを引く。
「ラートム…」
崩れゆく焔ビトに合掌し、そう呟く。
鎮魂の速さとチームワークの良さに目を輝かせているとバチっ、と不吉な音が聞こえた。
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作者名：二度寝 | 作成日時：2019年11月8日 2時
