愛し愛され。振り振られ。【灰谷竜胆】

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足の付け根を指で弄りながら、色っぽい顔で私を見上げる。




「やだ…」
「気持良くなりたくねぇの？」
「あんたはや…だ、」
「目潤んでんぞ」





口角を片方上げて、意地悪な顔。
こうして、こいつに弄ばれた女は何人いるんだろ。




「可愛い顔しやがって」
「……うるさい！」
「首に腕回せ」




有無を言わさない言い方に、
素直に言う事聞いてしまう。




「イイ子だ」
「んんっ」




私の頭を抱え込み、唇が重なった。
舌が絡み合って、静かな個室に水音がこだまする。


激しい口づけに、時折どちらかの吐息が漏れた。




「顔えっろ」
「……見ないで」
「隠してやるから来いよ」
「んんん」




厚い胸板に、ぎゅうっと抱き寄せられた。

離れた唇を、名残惜しいなんてどうかしてる。
この男の気まぐれに、振り回されてるだけなのに。




「一緒に帰ってやれねぇから、気ィつけて帰れよ」




美愛って子の所に行くのかな…？
って、何考えてんだ私。


なにも答えない私を引き離し、ほっぺをムニッ。




「聞いてんのか、コラ」
「き、きいてる！」




一々凄まないでよ！
びっくりするじゃんか！




「ボケッとしてんじゃねぇよ」
「ごめん…」
「危なっかしい野郎だな」
「……野郎じゃないよ」




「そうかよ」って、笑う竜胆。
頬から手を離し、携帯を確認して眉間に皺を寄せた。


私を膝から降ろし、スーツを整えてくれる。


このふいな優しさに、騙されそう。




「鍵忘れんなよ？」
「忘れないし！」
「もう入れてやんねぇかんな」
「わかってる！」




ニヤッと意地悪な顔で笑ってて、鼻につく！
それに食って掛かった私の頭をふわりと撫でた。えっ。




「うそ、困ったらいつでも来い」
「……っ」




「またな」って、個室を出て行く。
胸がキュッと鳴ったのは、絶対気のせい。



ドキドキうるさい心臓を落ち着かせ、仕事に戻る。



なんなの、あいつ。
今から大事な女に会いに行くクセに。



あんな奴のキスで、感じてる自分が腹立たしい。



でも本当にすごかった。



どんだけ場数を踏んだら、
あんなとろけるようなキス…って、やめやめ。



考えないようにすればするほど、頭の中は竜胆でいっぱい。


来週の予約を確認しようと、パソコンをカチャカチャ。
ゲッ。


私の苦手なお客様入ってるし…。


「俺の愛人になれ」と、しつこく口説いてくる親父。
たまに、セクハラ紛いな事もされるし…。


どう乗り切ろうか、今度はソレが頭を支配した。

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