愛し愛され。振り振られ。【灰谷竜胆】

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最近、Aの様子がおかしい。




「A」
「あ、うん！」
「……呼んだだけなんだけど」
「ご、ごめん！」




俺が話しかけると、
ビクッと驚くような仕草ばっかりするし、




「なーにしてんの？」
「べべべ、べつに！」




コソコソ携帯をいじって、
俺が近寄ると、携帯の画面を落とすし、




「ねぇ、なんかお前荷物減った？」
「そんな事ないでしょ！」




心なしか、
家からAの荷物が少し減ったように感じる。



なにこいつ。



まさか、出て行くつもりじゃねぇだろうな。




もしかして浮気？
他に男でも出来たわけ？




考えれば考える程、
嫌な方向にしか向かわない。




そして、段々イライラしてきた。




「ただいまー！」
「……」




いつもなら、
玄関まで迎えに行ってやるけど、今日の俺にそんな余裕はない。



美愛とご飯に行って、
ちゃんと八時前に帰ってくんのは可愛いけど。



ソファで携帯をいじっていても、
中々部屋に入って来ないA。



え？愛しすぎて、幻聴！？
それとも、鍵締め忘れて攫われた！？




「A！？」
「わっ！びっくりしたぁ」




まただ。


玄関に座って、携帯をいじってる。
早く靴脱いで、俺に顔見せに来いよ！


もう冷めちゃったの？


あームカツク。




「竜胆、どうしたの？」
「べつに」
「え？あ、待ってよ！竜胆！」




もう勝手にしろ。

俺だけこんな、好きなんかよ。うぜぇ。




「竜胆！」
「触んな」
「……え、」




Aの、悲痛な表情を見て、
すぐに湧く罪悪感。



けど、口から出た言葉を取り消すなんて、
今更出来なくて、寝室へ逃げた。



携帯ゲームをしたり、
ネットニュースを見たり、
とにかく自分を落ち着かせる。



あいつの事になると、
いっつも余裕がなくて、キツく当たって傷つけちまう。



Aが来たら、謝ろう。



そんで、素直に最近の行動が気になるって言おう。




そんな事を考えている内に、
転寝しちまってた。



まだ働かない頭で、
無意識に愛しい温もりを、手探りで探す。




ん？あれ？




「いねェじゃん…」




その時、一気に頭が働き出す。


は！？なんでいねぇの！？


慌てて、リビングに行くと、
ソファにちょこんと転がる、可愛いミノムシ。



そんな薄いブランケットじゃ、風邪引くだろ、バカ。




「……A…」




可愛いほっぺに、
涙の跡が残っていて、思わずギュッと抱きしめた。

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