愛し愛され。振り振られ。【灰谷竜胆】

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「二番目でもいいなんて、言うな」
「……ごめんなさい」




竜胆の、沈痛な表情に、
口から自然と零れる謝罪。




「そんな気持ちにさせてたとか、情けねェな俺」
「ううん…、幸せだったもん…んぐっ」




ん？良い雰囲気だったよね？

なんで、鼻を摘ままれてるんだろ。あれれ




「その、最後みたいな言い方やめろ」
「はなじでぇー！」
「ずっと俺から離れねェって、約束するか？」




鼻を摘まむ竜胆の腕を
揺すっていた手が、思わず止まる。




「……私でいいの…？」
「Aがいいんだよ」
「……私も竜胆がい…っ」
「泣かないで」




ぎゅうっと抱きしめられ
幸せ過ぎて、怖くなった。



夢じゃないよね？
夢だったら、このまま覚めないでほしい。



竜胆の存在を確かめるように、首に腕を回して、広い肩に頭を預けた。




「可愛い事すんなよ」
「……だいすき」
「食っちまうぞ、バカ」
「食べられたい…、かも…」
「は？」




ガバッと私を離した。

せっかく、竜胆にくっついてたのに…。がーん




「意味わかってんの？」
「うん…」




好きな人に触れられたいのは、
男も女も一緒だよ…？




「A…」
「あ、まま、まって！」
「……なに」




竜胆の顔が近付いて来て、
咄嗟に両手で阻止。


もちろん目の前には、不機嫌王子がおります…。




「お風呂入ってきて…、匂いがやだ…」
「……わりぃ」




そう言って、竜胆は私を持ち上げお風呂へ向かう。

私を持ち上げ…、
ん…？あれ？


なんで！？




「え、なんで私も！？」
「仲良くキレイキレイしようね？」
「まま、まって！私は後で、」




よいしょって、私を降ろしてニコニコ。




「はい、バンザーイ」
「し、しない！」
「じゃあ自分で脱ぐ？」
「脱がない！」
「もう諦めろって」




脱ぐ脱がないの押し問答。

結局、先に入ってもらって、後からタオルを巻いてお風呂へ突入…。




「おいで」
「うん…」
「髪の毛お団子したの？」
「濡れちゃうから…」
「可愛い」




湯船に浸かり、竜胆に背を向け、膝を抱えて座った。


甘い竜胆に慣れなくて、
口まで湯船に沈んで、ぶくぶく。


落ち着け私！




「一番大事な事忘れてた」
「ん？」
「美愛は幼馴染だよ」
「そ、っか」
「んで、兄貴の女」
「え？兄貴の！？」
「俺は美愛を女として見た事はねェ」




勘違いして、一人で暴走してたの私…？

恥ずかし過ぎて、鼻まで湯船に浸かり込んだ。

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