愛し愛され。振り振られ。【灰谷竜胆】

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竜胆は黙ったまま私を見下ろす。



「竜胆…？」
「お前危機感て、知ってっか？」
「あ、あんたなら大丈夫でしょ！」
「そうでもねぇかもよ」



ギシッとベッドが軋んで、
竜胆が私の横に膝をついた。



「なにして、」
「一緒に寝るんだろ？」
「寝るってそういう意味じゃ…」
「そういう意味って、どういう意味？」



竜胆が妖艶に微笑んで、私の頬を撫でた。
色気に圧倒されて、言葉が出て来ない。


脇腹辺りを指でツーとなぞられ、身体がビクッと反応してしまう。


慌てて、竜胆の手を掴んだ。



「手どかせ」
「やめ、」
「テメェが誘ったんだろうが」
「誘ってない！」
「聞き分けねぇと、縛んぞ」



やっぱりこんなヤバイ奴の部屋になんか、来るんじゃなかった。
人をボコボコ殴る奴が、優しいわけないじゃない！

prrrr

その時、竜胆の携帯が鳴った。
舌打ちをして、リビングへと戻って行く。

今の内に、この家を出よう！



「どうした？」



……え！？なに、今の甘い声！
寝室から恐る恐る竜胆を覗くと、電話片手にニコニコ。



「おやすみ言う為だけに、電話くれたの？」



なーんだ。
相手の子も、竜胆を大事に思ってるんじゃん。

抜き足差し足で、玄関に行き靴を履く。



グイッ。



「……っ！」



口を覆って、声を出すのをなんとか防いだ。
本日二度目の竜胆に捕まり、部屋に連れ戻された。

相手の子に誤解されたくないので、おとなしく従う事にする。



「あったかくして寝ろよ？おやすみ」



優しい声で言い放ち、電話を切った。



「どこ行くんだよ」
「どこだっていいじゃん」
「の割に、ちゃんと言う事聞くんだな」
「声出しちゃ悪いかと思って…」
「は？」
「大事な子でしょ？電話」
「そうだけど」
「勘違いされたらマズイかなって」



竜胆は鳩が豆鉄砲を食ったような顔してる。



「律儀なやつ…」
「じゃあ、」
「寝んぞ」
「ね、ねない！帰る！」



ズンズン寝室へ進んでいく竜胆に、足を踏ん張って必死に抵抗。



「帰る場所ねぇだろ」
「あ、ある！」
「今日は俺の抱き枕んなれ」
「やや、やだ！」
「贅沢な奴だなぁ」



雪崩れ込むように、ボフッと音を立て、ベッドに横になった。
足を絡めて、背中に腕が回され逃げ場を失う。

入れ墨の入った上半身に、顔が押し付けられ苦しい！



「なんもしねぇ、寝ろ」
「服着てよ…」



あやすように、トントン背中を叩かれているうちに、いつの間にか眠りについてしまった。

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