愛し愛され。振り振られ。【灰谷竜胆】

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嵐は突然に。


仕事帰り。
竜胆に電話を掛けようか、携帯を見つめている時だった。



キィイイイ。


すぐ近くで鳴り響いた轟音。



隣に止まった黒塗りの車。
そこから手が伸びてきて、私の腕を掴んだ。



その拍子に携帯が地面に落ちた。




「んんんー」
「出せ」




口元に何かを当てられ、意識が遠のく。
最後に聞いたのは、大嫌いな杉山の声。




　



　
　

　



　




目を開けると、薄暗い倉庫の中。
腕を縛られ、転がされていた。


埃っぽくて、思わず咽込んだ。




「起きたかい？」
「……杉山」
「今日も綺麗だね、Aちゃん」




私の前にしゃがみ込み、
ニタニタ笑ってて、気持ち悪い。




「この前は、とんだ邪魔が入った」




竜胆と兄貴が助けてくれた、あの日の事だろう。


私にとったら、救世主だったけど。




「この前の続きといこうか」
「なんのこと」
「僕のスーツを汚した事、忘れちゃったかな？」




言いながら、私の服に手をかけた。
ゾワッと全身に鳥肌が。




「自分の女が、他の男に抱かれるってどういう気持ちなんだろうな」




は！？
自分の女ってなに？


男の口が耳に当たって、ヌルリと舌が伝う。




「な、に、言って…、」
「灰谷どっちがAちゃんの彼氏なの？」
「……どっちも、ちがう」




杉山は、ガバッと顔を上げて私を睨む。

耳を今すぐ拭きたい！
気持ち悪い、吐きそう…。




「嘘をつくな」
「本当に違う」
「お前を餌に呼び出すんだ」
「来ないよ」




一度は助けてもらった。

でも、二人だって暇じゃない。
捕まったのは、自己責任。



だから、語尾を強めてもう一度言ってやった。




「私を餌にしても、二人は来ない」




その時、頬に鋭い痛みが走って、口の中が血の味に。
血走った眼が、私を冷たく見下ろす。




「まぁいい、ようやくお前を堪能できる」
「……っ」




今日に限って、運の悪い事にニットワンピース。


スカートの裾を捲り上げ、
下着をずらし、乾いたソコに無理矢理入ってきた。




「いっ…った…」
「ハァ…、」




あまりの激痛に、顔が歪む。



私の上で荒い息をする男。
目をギュッと瞑って、この時間が早く終われと祈った。




こんな奴に涙なんか見せたくないのに、
悔しさに耐えられなくて、ツーっと一筋頬を伝ってしまう。




それが、首へと流れて行って、
嬉しそうに、舐めとる杉山。




瞼の裏に、優しい竜胆を思い浮かべ、
痛みと共に、意識を手放した。

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