【モブサイコ100】愛される。【短編集】 (ページ1)

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瞳　　　影山律ページ1

僕と同じ塩中一年、生徒会のAさん。

僕たちは同じ中一、同じ生徒会、さらには同じクラスということもあり話す機会が多く仲も良かった。

いつも一緒に帰り、兄さんの部活が長引く日は二人きりで帰ることも少なくはなかった。

そんな僕たちをみるたびに学年の物好きたちは恋人なのか、と茶化した。

そんな時僕は断じて違うと否定し続けてきた。

否定するたびに何か胸を痛めつけるような感情があったなんて気づかないように. . . .。

そんな感情はなかったことにして。

二人きりの時がどんなに楽しく幸せでも、離れた後がどんなに辛く寂しくても、僕は必死に気づかないようにしていた。必死に隠し、必死に否定し続けてきた。

あの時まで。

僕はその日もAさんと二人で帰っていた。

....あの電柱を通り過ぎたらまたあの感情に一人耐えなくてはならないのか、そう思っていた時だった＿＿＿

『ね、ねえ、影山くん. . . ?わ、私、あなたのことがその、

僕はとても嫌な予感がした。いや、嬉しかった。でもそんな感情、必死に気づかないようにしていたんだ。

そんな予感は見事に的中した。

す、好き、なのかもしれない. . . . .』

これが、これが「恋」というものなのか。あぁ、今になってようやくわかった。これが、＿＿恋＿＿＿＿

でも恋なんて、僕には、こんな僕にはまだ早すぎる。僕にはAさんを幸せにできる勇気がなかった。

本当に、心の底から大好きだからこそ、幸せになってほしいんだ。たとえ相手が僕じゃなくてもAさんには幸せになってほしい。

僕はそれを遠くから見つめているだけでいいんだ。

だから僕はこう答えたんだ。

「ありがとう。でも僕の中では兄さんが一番なんだ。だから. . .、その、ごめんってことで . . .」

僕は嘘をついた。彼女にも、自分にも。

今もなお僕を見つめ続けているまっすぐなAさんの瞳に映る僕は、世界で一番大好きで愛していた人に嘘をついた、曲がりくねった人間なんだ。

君のそのまっすぐな瞳に僕は不釣り合いなんだ。

だからAさんは僕なんかじゃない、もっとその素敵なまっすぐな瞳に釣り合う人間と幸せになってね？

それが僕の幸せなんだ。

僕はその時、また、自分の想いを隠し否定していたことに気づいていなかった。

Aさんが僕でないと幸せになれないと思ってくれていたことにも。