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「その子に触んなあ!!」
絶叫に乗せてやってきた放水射撃の水圧により、馬乗りになっていた男は近くの壁まで吹き飛ばされる。受け身を取っていた物の、あまりの水圧に頭を打ち付け、男はぐったりと壁に背を預けて気絶する。そこをすかさずロベルティーネが仰向けの状態からナイフを男の心臓に向かって投擲した。ナイフは一直線に心臓を貫き、男は呻きながら力無く横向きに倒れこんだ。
これで一対一のイーブンに持ち込んだ。彼女はすぐに起き上がり体勢を整えるが、前方で不審な動きをしていた男が居なくなっている事に気付く。
(……逃げた? いや違う、音がする)
状況を整理しながら耳を澄ますと、僅かにカツカツと足音が聞こえた。音の質から間違いなくあの男の物であると同時に、「……ぃ、ご……さ」とメルヴィンの情け無い声も聞こえる。先程とは違う、危機迫る声にロベルティーネは音が鳴る方へと駆け出す。嫌な予感がしたからだ。
その予想は見事に的中する。少し離れた場所で、尻餅をつきながら後ずさるメルヴィンに、男は包丁を振り回しながら彼を追い詰めていた。それを何とか躱しながら、メルヴィンは口を動かす。
「わ、悪かったって。でも、俺、君達の味方じゃないしさ、仕方がないじゃん? ほ、ほら……そんな怖い顔してると、折角の男前が台無しに……ギャッ!?」
戯論などには興味が無いと言う様に男は包丁を薙ぐ。辿々しく避けるメルヴィンは笑顔を引攣らせながら、それでも話を続けた。
「顔に自信ないの? それは大丈夫だっ! ……て。凄くイケてるイケてる。まぁ、俺の方がイケてるけどっ! 包丁振り回さなくてもいいじゃん! それともなんか目的でもあるの?」
そこで男は包丁を振りかざす寸前で動きを止めた。そして、静かに包丁を下ろす。そこをチャンスだと思い、メルヴィンは男から少し距離を取ると、再び質問を繰り出した。
「何の目的があるの? 例えば、怨念とか……復讐とか?」
「……」
当然、男からの返事は無い。しかし、動きを止めたまま、動こうともしない。その様子から否定と見て、彼は更に続ける。
「うーん。じゃあ、殺人の快楽に浸りたいとか……?」
「……」
依然、返事は無い。しかし、動かない。目的はあるはずなのに、その目的が何一つ見えない事に首を傾げるメルヴィンだったが、そこでふと一つの答えを捻り出し、徐にそれを口にした。
「誰かに命令されてる……とか?」
「…………あ」
言葉が帰ってきた。
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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月18日 21時