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「そうね……あの青年を殺したか問われれば、殺していない。だって、それは美しくないもの。だけど、関係が無いかと問われれば、無い訳ではない。貴方は、どう思う?」

 言葉を選ぶ様にして発言した彼女に、ロベルティーネはその言葉の意味を吟味する。そして、静かにその答えの意味を述べた。

「青年を操っていた奴と、知り合いなのか?」
「フフ……知り合いと言うには生温いかもしれないわね」

 100点満点の点数とはいかなかった様だが、70点程度には正解だったらしい。紅いルージュが塗られた唇を満足そうに歪ませると、その口に粉砂糖が塗されたクッキーを運んだ。
 「殺してはいないが、関係が無い訳ではない」。この言葉を単純に汲み取れば、青年を操って殺しては居ないけど、操っていた魔女とは共犯かもしれないと言う心理に辿り着くが、それは間違いだ。
 それを証明するのが、「だって、それは美しくないもの」。敢えて、間に挟んできたこの言葉は、ある意味彼女の人柄を表している発言とも言える。だが、この場合、「私が人を殺すなら、せめて美しい散り際にする」と言う意味も込められている。つまり、青年を殺してはいない、共犯も無い事実に辿り着くのだ。実に優雅で上品な彼女らしい言葉である。殺し屋であるロベルティーネがミネルヴァの立場なら、そう言うのだろうと勝手な憶測にして、真実を見出す結果となった。
 しかし、そこに「関係が無い訳ではない」と言う一文は、ミネルヴァが魔女である事、彼女が青年を操っていた魔女と共犯でない事を念頭に置いた上で、知り合いであると言う事を導かねばならない。尋問の際に聞いた「確かに私は魔女よ」の文を聞き流す事がなければ、すぐに分かる事である。
 全てを吟味し終えた所で、怪しい女からの警戒を解く訳にはいかない。しかし、ミネルヴァは「貴方、裏側の人でしょ? 頼みたい事があるの」と言い、最後の一口程度しか残っていなかった紅茶を飲み干した。別にロベルティーネが殺し屋だと発言をした訳では無いが、彼女の行動を見てそう推測したのだろう。ロベルティーネも改めて体制を整え、軽く相槌を打った。二人のティーカップに注がれた紅茶からは、もう湯気は登らない。

「殺してほしい女が居るの」
「……それは、あの男を操っていた女で良いのか?」
「えぇ、合ってるわ。報酬は……」

 ロベルティーネとメルヴィンに其々目線を送ると、彼女はニンマリと微笑む。あぁ、成る程、と言う感じの笑みだ。

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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月18日 21時

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