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一瞬、自分の事を言われたのかと思い、ロベルティーネは反射的に服の匂いを嗅ぐ。香水も何も使っていない上、一昨日の仕事の関係で服を新調していたので、ほぼ新品同様の微かに残る糊の匂いしかしなかった。いや、嘘吐きの匂いってなんだと思い、メルヴィンの方に視線を移すと、先程まで不機嫌そうだった青年の表情はニヤついていおり、そこで初めて彼女は自分に言われたのではないと気付く。メルヴィンのしてやったり顔が気に入らなかったので、この後彼女は強めに青年の頭を叩いた。
 結局、何故彼がダンテに対して、“嘘吐き”と言ったのかは分からずじまいに話を終えた。

***

「昨日未明、ジャルドーレ通り周辺で再び切り裂き事件が発生しました。被害者は三十代の女性で、腹部を切りつけられる等の重傷を負っていますが、幸いにも命に別状はない模様」
「煩い、声に出して読むな」

 あれから、目ぼしい人から情報を集め回ったが、結果としては惨敗。途中、昼食を挟みながらも、日が傾き始めるまで手当たり次第市民に話し掛けたが、何一つ魔女に関する情報が手に入れられず、文字通り途方に暮れていた。
 今日の所はダンテの忠告通り、夕方5時に広場から撤退し、丁度夕刊を配っていた新聞配達人から新聞を買ってから、ロベルティーネの居城へと戻る。道中、夕食の買い出しをしながら、購入した新聞を二人で回し読んでいた。ついでにダンテの言っていた事件が本当かどうか、確認する名目もある。
 ダンテが言っていた事件は、一週間程前から騒がれている連続切り裂き事件の事だった。ジャルドーレ通り周辺で既に六件も起こっており、死者も出ている悪質な事件である。被害者の年齢、性別はバラバラ、犯行時刻は大体夕方6時以降である事が多い。助かった被害者の目撃証言から、犯人の年齢は二十歳ぐらいの男で痩せ型、身長は約179cm、帽子にマスク、黒っぽい服装と絵に描いた様な不審者である。すぐに見つかりそうな物だが、現在まで容疑者の目処は立っておらず、警察も手を焼いているらしい。

「でも、この犯人。確実に急所狙って切ってるよね。殺しに掛かってるって感じ」
「そう? それにしては詰めが甘いと思うね。急所を切りつけたとしても、殺せてない時点で殺人犯失格だ」
「……ねぇ、ロベルは被害者と犯人、どっちの味方なの?」

 どっちの味方でもなかった。
 ジャルドーレの喧騒が徐々に遠退き、夕日の影になって寒々しくなった人気の無い路地を縫う様にして二人は進んだ。

◆第III章「人形の刻印」 01→←├ 08



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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月18日 21時

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