syp:知らない世界 ページ1
「え？街に行ったことないんすか？その年で？」
『待って、いきなり当たり強すぎて心折れそう』
始まりは、初めての休暇を前に私が不意にこぼした一言だった。
＿＿城下町の観光とかしてみたいわね。私、街に行ったことないのよ。
それは、箱入りの公爵令嬢としては当然のことだったし、実際、高位の貴族令嬢にはそういった者が多く存在する。
けれど、平民からしたら街とはすなわち庭であり、街に出たことがないのは病人か赤子くらいのものだという。
「なら、俺が案内してあげましょうか」
『え、本当に？対価は？』
「Aさん、俺の事なんやと思ってるんですか。そのくらいタダでやりますよ」
淡々とそう語るショッピを、信じられない……という気持ちを込めた眼差しで見つめたら、彼は少し苦笑いしてこう続けた。
「そんなに気に病むんやったら、当日はお洒落してきてください。デートしましょ、それが対価です」
そんなわけで、私は初めての城下町をショッピに案内してもらうことになった。
彼に言われた通り、“お忍び用”のシンプルなワンピースを着て、ウエスト部分にアクセントとして紫色のリボンを結ぶ。
普段は一つ結びの髪を緩く巻いて下ろし、つばの大きい帽子をかぶれば、どこからどう見ても平凡な町娘の完成である。
「……いや、変装舐めとるんすか」
『え？』
「やんごとなきオーラが隠せてないんすよ。平民は髪巻いたりしないし、これみよがしに絹のリボンなんかつけないやろ。どっからどう見てもいい所のお嬢様やないっすか」
『……ごめんな、私が高貴な女なばっかりに……』
「クソ、事実やから言い返せへんのが腹立つ」
ショッピは苦い顔をして、私に露店で買ったと思われる串焼き肉を差し出した。
『え、美味しそう！いいの？』
「それ持ってれば、多少は高貴さが薄れるんで」
『私の高貴さってその程度？……美味っ！』
塩胡椒と多少の香草だけで味付けされた肉は、青空の下で食べるだけでこんなにも美味しくなるらしい。
これを食べられただけでも、街に下りて来た甲斐があったというものだ。
「行きたい場所とかあります？案内しますよ」
『そうね、せっかく来たんだし露店が見たいわ』
「そういう事やったら任せてください。この通りは面白い店ばっかりですよ」
ショッピはそう言うと、するりと私の手に自身の手を絡めた。
「逸れんといてくださいね」
『っ、うん』
彼に手を引かれながら、探索が始まった。
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かれーるぅ。 - 涼風音欧様！番外編のリクエストを受けていただき、ありがとうございます！できれば、grさんとosさんでお茶会ってできますか？できればでいいのでお願いします！ (8月24日 19時) (
レス) id: b3274f6834 (このIDを非表示/違反報告)
涼風音欧(プロフ) - 夢崎咲さん» コメントありがとうございます！書かせていただきます！ (8月5日 21時) (レス) id: d3245f1ebf (このIDを非表示/違反報告)
夢崎咲 - zmさんと暗躍してほしいです！もしよろしければおねがいします。 (8月5日 7時) (レス) @page4 id: c31cf4a45c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2023年8月3日 21時
