大丈夫大丈夫……多分 ページ2
空は快晴、風は西。
絶好の船出日和となった任務開始の日の朝。
私の心はどんよりと曇っていた。
「おはようございます、少将殿……ってうわっ！？クマやば！？」
『あー、おはようございます、中佐。言うて一睡も出来なかったけど。そんなに酷いです？私の顔』
「何日寝てないんですか少将……！ゲームばっかりしてないでちゃんと寝てくださいね！？」
『いや、してないし。失礼な奴め』
「本当に大丈夫ですか、少将。今回の任務、部下を連れて行けないなんて……。生活力が子供以下で、私が言わなきゃ食事も入浴も忘れてぼーっとしているあなたのことが、私は心配で心配で……」
『大丈夫大丈夫……多分』
私がへらっと笑うと、中佐は頭を抱える。
「いいですか、少将！あなたはとても強い。だから、戦闘や任務に関してはさほど心配していないんです。
我々が憂いているのは、あなたが食事を忘れて餓死したり、睡眠不足で倒れる可能性の方なんですよ！」
『……えへ』
「えへ、じゃない！少将、約束してください。1日最低1回はご飯を食べること、夜12時になったら、眠れなくてもベッドに入って体を休めること！あと、それから……」
『わかったってば！私ってそんなに信用ない？』
私がこてんと首を傾げて中佐を見ると、彼女はグッと言葉を詰まらせる。
『とにかく、心配しなくても上の納得する戦果は挙げてくるつもりだよ。だから、安心して待ってて』
そう言い残し、私は用意された軍艦に乗り込む。
たったひとりで使うには広すぎる船内を歩きながら、ぽつりと呟いた。
『……大丈夫に、決まってるじゃん』
……戦果を挙げなければ、私はこの組織に置いて貰えない。
身寄りのない私は、誰よりも戦果を挙げ、役に立つ存在として求められ続けなければならない。
居場所を無くすのは……怖いのだ。
私はそれをよく知っている。
幼い日に私を残して消えていった故郷、家族、友人。
拾ってくれた海軍には感謝しているが、信頼はしていない。……というかできない。これは私の人間性の問題だが、簡単に信用したり、馴れ合ったりするのがどうにも苦手だった。
『おぇっ』
ぐるぐると止めどなく思考を続けていたら、突然酷い吐き気に襲われた。
原因不明の吐き気や頭痛も、もう何年前からか分からない。
何かの病気かもしれないけど、それで死ねるならちょうどいいと思って放置している。
『幸先悪……』
ため息とともにそう呟いて、私は舵を切った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 457人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
早桃 - んもー！めっちゃ好きです〜！！無理せず更新頑張ってくださいねぇぇぇ！応援してます！ (2022年10月20日 21時) (
レス) @page9 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
はるふ(プロフ) - 神作見つけてしまった😎これから応援しています🫡 (2022年10月20日 20時) (レス) @page9 id: 1cfa02e0c5 (このIDを非表示/違反報告)
涼風音欧(プロフ) - サメ好きさん» コメントありがとうございます！そんな風に言ってもらえるなんてとても嬉しいです、気長にお付き合いください！ (2022年10月20日 0時) (レス) id: d3245f1ebf (このIDを非表示/違反報告)
サメ好き - ものすごく面白かったです！文が見やすく情景が浮かびやすいのでめっちゃ好きです。更新待ってます！ (2022年10月18日 23時) (レス) @page7 id: c06f6fba38 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月16日 3時
