頭沸いてんのか ページ4
私が男の顔を見ながら首を傾げていると、ぐわんと体制が崩れる。
『おっ』
なんてことは無い、ただの立ちくらみだ。
しかしこのまま倒れると、商品棚に顔面からダイブしてしまう。
さすがにそれはまずい。
しかしながら足を踏ん張る気力も残っておらず、私に出来るのは重力に身を任せることのみ。
……許せ、お米よ。後でちゃんと食べるから。
衝突の痛みに備えて目を瞑ったが、いつまでたってもその衝撃はやって来ない。
恐る恐る目を開ければ、先程まで言い争っていた男が私を抱きとめていた。
『わぁ……ありがとうお兄さん。みみっちいとか言ってごめん……』
へらへらと笑いながら謝罪を口にするも、何故か男と目が合わない。
「……軽い……軽すぎる……身長に対して体重がおかしいだろう。立ちくらみと酷いクマ、それから貧血か。内科は専門外だが……こいつはまずいな」
『いや、なんて？』
男はブツブツと何かを口走ったと思うと、ひょいと私を担ぎあげる。
いわゆるお姫様抱っこだ。
『……なんでなの？？』
「うるせぇ。急患を放っておけねぇだけだ」
彼はそう言って、颯爽と弁当屋を後にする。
因みにおにぎり弁当はちゃっかり買っていた。
人が自力で立てないのをいいことに、許されないと思う。
男の歩調に合わせてゆらゆらと揺らされていると、なんだか眠気が押し寄せてきた。
そういえば最近、睡眠の質も悪かったことを思い出す。
彼の体温と規則的な揺れが、優しく私を眠りに導いて……
気づいたら、私は診察台の上に拘束されていた。
『どうしてなの……？』
「とぼける気か、海軍」
ベッドサイドには、先程出会った若い男の姿。
帽子とコートは脱いだのか、パーカーにジーンズというラフな装いだった。
その顔を見て、ぱっと思い出す。
『……トラファルガー・ロー』
「正解だ。急に倒れたかと思えば、テメェ、海軍だったとはな。俺の船に潜入しろとでも言われたか？全て話せば命までは取らねぇ」
私の防寒具は剥がされていて、ブラウスとスラックスだけという軽装備。
ローが医者だと言うのは有名な話だし、恐らく治療してくれようとして、服を脱がせている最中に私の正義マントを見たことで海軍だと気づいたのだろう。
『脱がせたんですか。変態』
「っ！？これは必要な処置だ。見たところ軽度の栄養失調だぞ、テメェ」
『そんなはずないです。この一週間ちゃんと食べてましたから。ドライフルーツ』
「頭沸いてんのか」
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早桃 - んもー！めっちゃ好きです〜！！無理せず更新頑張ってくださいねぇぇぇ！応援してます！ (2022年10月20日 21時) (
レス) @page9 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
はるふ(プロフ) - 神作見つけてしまった😎これから応援しています🫡 (2022年10月20日 20時) (レス) @page9 id: 1cfa02e0c5 (このIDを非表示/違反報告)
涼風音欧(プロフ) - サメ好きさん» コメントありがとうございます！そんな風に言ってもらえるなんてとても嬉しいです、気長にお付き合いください！ (2022年10月20日 0時) (レス) id: d3245f1ebf (このIDを非表示/違反報告)
サメ好き - ものすごく面白かったです！文が見やすく情景が浮かびやすいのでめっちゃ好きです。更新待ってます！ (2022年10月18日 23時) (レス) @page7 id: c06f6fba38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月16日 3時
