失踪事件 ページ10
『彼女は見つかったんですか？』
「それが、どうやらこの国に上陸中の海賊、麦わらのルフィと行動を共にしているらしいとスモーカーさんが」
ルフィ、と言えば、エースの弟くんではないか。
王女を誘拐するような極悪海賊なのか、と言う考えが一瞬脳裏を過ったが、それにしては邪気のない顔をしていた気がする。
遠目だったからよく分からないけど、あれでマジの誘拐犯ならナチュラルサイコパスの線を疑わねばならない。
『……そう、ですか。無事だと良いですね』
「はい、本当に。そういえば、以前にもありましたね、王族の失踪事件」
『と、いうと？』
「そっか、Aちゃんはまだ幼かったでしょうし、知りませんよね。13年前に、とある王国の王子が失踪した事件があったんです。その王子の失踪を機に革命が起きて、革命のリーダーが新しい王になったって聞いてますよ。元々悪政で有名な国だったので、国民も喜んでいたとか」
『……そんなことが』
私がそう呟くと、少し申し訳なさそうに笑ってから、気を取り直すように明るく言った。
「あぁ、でも、この革命の成功に尽力したのは、あなたの所属する海上使用人派遣協会だったらしいですよ！昔のことなので、私も詳しくは知らないんですけど」
『へぇ、そうなんですか！部長……私の上司は昔のこと話したがらないからなぁ』
そんな風に談笑していると、海兵の1人がこちらに駆け寄ってきた。
「報告します！曹長、これから我々はアラバスタ内部を通る大河、サンドラ河を北上し、レインベースを目指します！もちろん、そこの君も」
「そうですか、レインベースに……」
『えっ、今すぐですか！？』
「なにかあるんですか？Aちゃん」
『いや、大したことじゃないけど、宿を取ったままだから……』
「そういうことなら、この街に駐屯する部隊に連絡を入れてもらいましょう。本当はAちゃんを行かせてあげたいけど、目を離したらスモーカーさんに怒られちゃいますし」
『あー、わりとすぐに怒りそう』
「誰が怒るって、おい」
たしぎが苦笑いするのにつられて私が爆笑すると、いつの間にか部屋を訪れていたスモーカーが低い声を出した。
『いや、もうキレてるし！』
「テメェの声はキャンキャン響くんだよ」
『酷い言い草ですね、泣きますよ？』
「勝手にしろ」
スモーカーの苦々しい声と共に、船は出航した。
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
