だめだった、捕まった ページ8
「おい、たしぎ!そいつを渡せ!」
追いついてきたスモーカーが、お姉さんに向かって私を引き渡すように指示を出す。
しかし、私から話を聞いていたお姉さんが素直に引渡すはずもなく。
「なっ、駄目ですよスモーカーさん!こんな女の子相手になんてことを……!いくらスモーカーさんでも、やっていいことと悪いことがありますっ!」
「何言ってやがる!?おい玉依、たしぎに何吹き込みやがった!」
そう言いながら、スモーカーは私の背負っていたリュックを掴んで持ち上げる。
奴は背が高いので、必然的に私まで釣り上げられてしまった。
『わっ!やめろっ、足着いてないです!助けろください!』
「いいかたしぎ。こいつぁ玉依のA、金次第じゃなんだってやる、海上使用人派遣協会の社員だ。使用人だのと銘打って、過去にいくつもの殺傷事件に関与してきた危険なガキだぞ。
俺に変な疑いをかける前に、まずは目の前にいるこいつの情報を頭に叩き込め」
「し、失礼しました!……それにしても、この子が噂の……まだこんなに幼いのに」
「あぁ。聞くところによりゃ、懸賞金をかけるなら1億を優に超えるだろうって話だが……」
「とてもそうは見えませんね……」
『あの!すごい失礼なこと言ってる自覚あります!?それと人を宙ぶらりんにしたまま話し込むのやめて欲しいんですけど!?私のことなんだと思ってんだよこんにゃろぉ!』
猛烈に抗議すると、スモーカーは煩そうに顔を顰めて私を地面に下ろす。
「で、玉依。なんで俺と戦わなかった?戦えば逃げられるくらいには強いんじゃねぇのか」
『なんで、って。そりゃ普通に、さっきのは暴力沙汰にする必要なかったじゃないですか。海賊であるエースとスモーカーさんで戦ってるならまだしも、私は一般人ですからね。あと正直、海軍大佐のガチの殺気とか浴び続けられるほど肝座ってないんで。16歳の全力大号泣とかあんまり見たくないでしょ?』
「……分からねぇガキだな。取り敢えずお前は船に連れていく。火拳のエースとの関係を聞かなけりゃならねぇ」
『は!?今のは無罪放免で解放される流れじゃないの?』
「おいたしぎ、そいつ連れてこい」
「はっ!」
『ねぇ無視する!この人無視する!!』
たしぎと呼ばれた曹長は、「話は向こうで聞きますから」と私を宥めながら誘導する。
私の扱いが酔っ払いに近い気がしてならないが、手錠などを掛けられることも無く、あくまで事情聴取だけらしいので同行することにした。
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作者名:涼風音欧 | 作成日時:2022年10月8日 3時