(人生が)詰む詰む ページ6
「待て！火拳、玉依！」
『うわぁー！なんで私まで追われてるんだよ！！勘弁してよ仕事なんです！！』
皆さんごきげんよう。
私は今、海軍大佐の中でも頭1つ抜けて有名な、あの白猟のスモーカーに全力で追われています。
何故こうなったかって？
時は少し遡る……。
『はぁ、はぁ……やっと見つけた……！』
私が彼に追いついた時には、既にエースとスモーカーは相対していた。
エースの少し後方には、走り去る数人の男女の姿があり、そのうちの一人がしきりに振り返ってこちらを気にしているところから、エースは件の弟と再会できたのだろうと推察する。
いいと思う、弟のピンチに駆けつけ、逃がしてあげるお兄ちゃん。
かっこいいよ、素晴らしい兄弟愛だよ。
だがしかし。
「おっ！A！」
その優しさは私にまで向かわないらしい。
エースは海軍大佐の目の前で、いかにも仲間っぽい砕けた雰囲気で、私に声をかける。
「……A、だと？」
『ヒェッ、人違いですぅ』
ほら！スモーカーがこっちに気づいちゃったじゃないか！
私は受ける依頼の方向性的に、あまりお天道様に胸を張れるような仕事をしていない。
それでも需要があるから、動けるうちはこの仕事を辞めるつもりは無いが、一部の頭の固い海軍からはよく思われていないのも事実。
海軍からの仕事も受けることがあるため、賞金首になるようなことはないが、善良な守るべき市民とは思われていないと思う。
「……テメェ、玉依のAか」
『あらぁ……よくご存知で……』
いつの間にか立派な二つ名までついちゃって、目ェ付けられちゃってるのは確定事項である。
ちなみに、玉依ってのはワノ国の神様で、水を司る女神様らしい。そんな仰々しい名前で呼ばないでくれると助かる……主に私の精神衛生的な観点から。
「テメェもついに海賊に付いたか。なら話は早ぇ、ここで纏めて捕まえてやる」
『いや、これは仕事の一環なんですって！私はどっちに付くとか考えてないし、このまま一生雇われ使用人で…もがっ』
「そーいうことだ、Aは今俺の女だからな。手ぇ出すなよ」
私が弁明しようと口を開くと、走ってきたエースが私の口を押えながら言う。
いやいやいや、俺の女ってなんだよ！
なんでそんな事言うの！たった今この瞬間、スモーカーは絶対Aを捕まえるマンに進化しちゃったよ！
はー、殺意殺意。これは人生詰んじゃいましたね。
私はエースに引きずられながら遠い目をしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 354人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
