目を離したほんの少しの隙 ページ5
『ちょっと、まだ食べるつもり！？』
「ん？Aはそれだけで足りるのか？」
『足りるも何も、むしろ多いくらい食べちゃったけどね？さすがにエースみたいに、皿が山になるまでは食べられないから』
一通り砂漠越えの荷物を買い込み、そのついでに街の人から聞いた、たくさんの情報が集まるという街一番のレストランを訪れてから1時間、私とエースは食べに食べた。
情報収集とか忘れてるんじゃないかと思うくらい食べた。
さすがにお腹いっぱいになって、そろそろエースの目的である、とある人物について聞き込みを……と思ったのだが、当の本人が未だ食べることを辞めない。
『……私、先に宿を取ってくるよ。エースが食べ終わるの待ってたら日が暮れちゃう。電伝虫の番号だけ教えてくれたら、宿の場所と部屋の番号は連絡するから』
「お、そうか！頼むよ。ここの飯美味いから、もう少し食ってから行く」
『はいはい、分かりました』
私は自分の分のご飯代だけカウンターに置いて、店をあとにする。
まさかそのわずか十数分後に海軍大佐が、そしてそのすぐあとに新進気鋭のルーキー海賊が入店するとも知らず、私は近くの大きな宿屋に向けて歩みを進めた。
『満室ぅ！？』
「そうなんだよ、済まないね。ツインの部屋で良ければ一部屋空いてるんだが……」
『あぁ〜……』
この辺りじゃいちばん大きくて、なおかつ安全性も高いと評判の宿屋に来てみたら、一人部屋はまさかの満室。
ツインの部屋なら、と言うので不承不承その部屋を予約する。
ま、ベットは別れてるみたいだし、エースも許してくれることだろう。
部屋に入り、荷物を下ろして一息ついてから、エースに連絡すべく電伝虫をかけた。
……のだが、一向に繋がる気配がない。
『……なんか、嫌な予感』
シックスセンスとでも言うべきか、私のこう言う勘はだいたい当たる。
それも良くない事象に限っては、精度100％を誇っていたりする。
少し迷った後、私は下ろしたばかりの荷物をまとめて背負い、宿を後にした。
そうして向かったレストランだったが、時すでに遅し。
何がどうしてそうなったのか分からないが、でかい風穴の空いたレストランは、野次馬を除けばもぬけの殻。
その正面の道を真っ直ぐ行った先で、火柱が上がったのが見えた。
『もしかしなくてもあそこだ』
私は頭を抱えて、大きなため息をついてから喧騒の中心に向かって走り出した。
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
