戦いは終わらない ページ33
ギィ、と音を立てて時計台の時計部分が開く。
時間になったらここが開いて、そこから広場の真ん中を狙うという寸法だったのだろう。
差し込んでくる陽光が、嫌に眩しい。
『どうして……こんなの、どうやって止めたら……』
「な、なによ、その砲弾がどうしたの！？」
私が砲弾を抱えたまま立ち尽くしていると、カエルの被り物をした女が不安そうに尋ねてくる。
この反応からして、きっとこいつらは知らされていないのだ。
……この爆弾が、時限式だということを。
ビビに知らせなきゃ、と立ち上がりかけたその時、光が影ってひとつの人影が浮かび上がる。
『……ペル、さん？』
そこに立っていたのは、アラバスタ最強の戦士と呼ばれた男だった。
世界会議で一度だけ会ったことがあるが、その時はきっと彼は覚えていない。
爆弾を抱えている今の私は、きっと彼の目には敵として映るはずで……
「貴女が、A様ですね」
『な、なんで、名前……』
「ルフィくんから聞きました。それに、ビビ様が幼い頃によく口にしていた名前でもあります」
そう言った彼の目はとても優しげで、凪いでいた。
『っ、そうだ、これ、この爆弾が時限式で！多分あと数十秒もしないうちに爆発するの、そしたらビビの苦労が全部水の泡に……！』
「A様、落ち着いてください。それは、俺にお任せを。……そしてあわよくば、ビビ様のお傍で、彼女を支えて欲しい」
『それは、もちろんそのつもりで……でも、いくらあなたが強くても、この爆弾はもう……』
「えぇ、存じております」
そう言うと、ペルは隼へと姿を変える。
『まさか貴方！』
「どうか、ビビ様にお伝えください。あなた方ネフェルタリ家に仕えられたこと、心より誇らしく思います、と」
ペルが私の手から爆弾を取り上げて、空へ羽ばたいていく。
これで救われる命の数を思えば、それに、覚悟を決めた戦士の目を見てしまえば、止めることは出来なかった。
『はは、嫌になるな……私にはなんにも、出来やしない』
はるか上空で、閃光と爆発音。
それに伴う爆風で、一瞬だけ静けさが訪れる。
しかし、その静寂も束の間、再び誰かの怒号が上がる。
剣がぶつかる、銃が火を吹く。
戦いは、まだ終わらない。
＊＊＊＊＊＊＊＊
お久しぶりです！
ワンピ再熱したのでちまちま描きます。
本日5話更新です。
続く
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
