爆破予告は突然に ページ31
「あなた……何故それを？」
静かで、僅かに震える声が私に尋ねる。
『何故って、職業柄そういうのには詳しくないと食べていけませんからね』
へらりと笑えば、彼女は苦い顔をした。
「知っているのなら話は早いわ。私の目的は歴史の本文の解読。その為にこの国へ来たの、あなたが他国の王女だったとして、私にとってはなんの交渉材料にもならない」
『……私が、その歴史の本文の在処を知っていると言っても……？』
「っ！？」
ニコ・ロビンの目の色が変わる。
話の主導権を握ることには成功した、あとは、彼女と交渉するだけだ。
『ダウリッヒは、アラバスタ同様歴史の長い国。そこに歴史の本文があったっておかしくは無いでしょう？そして、その所在地は正当な王位継承者にだけ口伝で伝えられてきた……つまり、あの国の歴史の本文の場所を知るのは私一人』
「……何が望み？」
『人質の解放を』
「……それは呑めないわ。ただ、あなたが着いてくるのであれば止めはしない」
『うーん、まぁいいか、それで行きましょ』
要は、これ以上コブラ王を傷つけさせないように見張ってても良いよ、ってことだ。
それならついて行くべきだろう。
「待ってくれ！今、ダウリッヒと言ったか？では、君は前国王の……」
『えぇ、娘ですよ。対外的には息子でしたけど』
「……そうか、生きていたのか……。ビビと懇意にしてくれていた君のことは、私も気掛かりだった。国を追われた君に、こんなことを頼むのは酷かもしれないが……どうか、ビビを助けてやってくれないか。私のことは良い、だが、午後4時半に、宮前広場に爆破予告を受けているのだ。ビビは今、それを止めるため動いている、だからどうか、彼女に力を貸してやって欲しい……」
コブラ王は、私に対して深く頭を下げる。
普段は使用人としてペコペコ頭を下げる役目なので、こういうのはどうにも落ち着かない。
『や、やめてください！爆破予告なら何とかしますから！4時半？あと7分もある！やったね！お姉さん、やっぱついて行くの無しで！用が出来ました！たしぎさんも！ちょっと爆破止めて来まーす！』
そう言って駆け出せば、後ろから「Aちゃん！？」と呼びかけられる。
しかし止まれない、何故って友人の国が割とマジめにピンチらしいので。
こんなことを言ってはなんだが、ニコ・ロビンが無為にコブラ王を傷つけることは無いような気がしている。
なので私は、取り敢えず彼女の元に駆けつけるのが先決だ。
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
