伸びしろにご期待ください ページ4
『16歳のうら若きレディを捕まえてガキだなんて最低！』
「16？ルフィより下じゃねぇか、ガキだガキ！レディってのはもうちょっと色々成長してから言うもんだ！」
『はぁ？これは伸びしろです！！』
「それは無理……うおっ、こら揺らすんじゃねぇA！」
全く失礼な男である。
地味に気にしてるんだからそこはそっとしておくのが紳士ってやつじゃないのか。
『まぁとにかく、依頼内容に不備は無いし、これから1週間はあなたのために働くよ、エース』
「おう、よろしくなA」
そう言って、エースはニカッと笑う。
こうしていれば好青年に見えるのに、口を開けばバカだのガキだの……でも、気の良い奴だと言うのは確かだ。
今回の仕事は、案外楽しくなりそう。
そうこうしているうちに、船はアラバスタに到着する。
賞金首のエースの船を堂々と港に止める訳にもいかないので、港から少し離れた岸辺に錨を下ろし、上陸した。
『あ〜ひっさびさの陸！』
「よし、まずは腹ごしらえだな。Aも来るだろ？」
『もちろん！砂漠の特産品ってなんだろう』
「サソリとかじゃねぇか？」
『それ食べれるの……？』
エースに連れられ、アラバスタの港町へ向かう。
道行く人たちの話に耳を傾ければ、ここがナノハナという町だと分かった。
「やぁやぁそこの兄ちゃん！ちょっと寄ってってくれよ！ここじゃ香水が有名でね、1本どうだい？彼女への贈り物にピッタリだよ！」
街を歩けばすぐ、商人に呼び止められる。
どうやら私たちはカップルに見えているらしい。
もちろん我々はビジネスパートナーなので、別に結構です、と断ろうとしたのだが。
「おぉ、そりゃいいな。オッサン、こいつが喜びそうなの1瓶、見繕ってくれ」
「はいよ、毎度あり！」
エースは勧められた可愛らしい小瓶を買うと、「ほらよ、受け取ってくれ」と私に投げて寄こした。
商人たちからはヒューヒューとヤジが飛ぶし、エースはその歓声に応えてるし、なんだかいたたまれない。
『ちょっと、どういうつもりなの？』
小声でエースに尋ねると、彼はニヤリと笑う。
「得体の知れない男が1人でふらつくより、どこにでも居そうなカップルが2人で観光旅行をしてた方が怪しまれねぇだろ？
……付き合ってくれよ、A？」
彼は私の耳元で囁いて、甘い笑顔を見せる。
それが本当の恋人に向けるようなものに見えて、一瞬固まってしまう。
オマケに腰なんか抱いてくるから、こいつはホントにタチが悪い。
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
