生き残り ページ30
『……結局、反乱は始まっちゃったのね』
戦闘音が鳴り響くアルバーナに降り立ち、そう独りごちれば、たしぎは眉を顰めて頷いた。
「先行した部隊によれば、現在の主戦場は宮前広場……反乱軍は既にかなり深部まで入り込んでいるみたいですね」
かなりの行軍スピードではあったが、所詮人の足。
海軍が到着する頃には、反乱軍と国王軍の戦いは佳境と言っても差支えのない様相を呈していた。
『なら、そこに向かいましょう。ここまで大きくなった戦いを停められるとしたら、ビビだけです。彼女が行動を起こすまでに、犠牲者をどれだけ減らせるかが肝になる』
早足で宮前広場へと向かおうとするが、その前に立ちはだかる人物がひとり。
国王コブラを人質にとったその人は、昨晩レインディナーズにもいたクロコダイルの右腕、ミス・オールサンデーだった。
「あら、侵入者さんはいつから海軍の手先になったのかしら」
『手先というつもりは無いんですけど……まぁ、こうなった以上お姉さんとは敵対関係ですかね』
「そう……残念ね。あなたたちが道を譲る気が無いのなら……殺しかねないわ」
彼女の殺気に、ぞわりと肌が粟立つ。
だがしかし、こちらとしても引く訳にはいかないのだ。
少なくとも、ビビの父であるコブラ王を解放してもらわないと、今も辛い戦いに身を投じているであろう彼女に顔向けができない。
『あら、いいんですか？私を殺して』
「……どういうことかしら？」
『クロコダイルさんから聞いてませんか？私はダウリッヒ王国の前王室の生き残り。それだけ言えば、お姉さんなら私の利用価値も分かってくださるでしょ？』
その言葉に、ミス・オールサンデーは少しだけ逡巡したあと「どうでもいいわ」と首を横に振る。
「私の目的はクロコダイルとは別にあるの。私からしたら、国家の乗っ取りも軍事国家の設立も全部、通過点でしかない」
彼女がらしくもなく怒気をにじませてそう言った直後、「曹長！」と兵士が声を上げる。
「この女、ニコ・ロビンです！間違いない……！」
20年前、当時8歳の少女が軍艦を6隻も沈めたという事件は、世界中を震撼させた。
それをやったのが、目の前の女……ニコ・ロビンだと言うのだ。
生まれる前の話だが……私も話は聞いたことがある。
そして、こういう仕事をしている以上、知りたくもない裏情報はいつだって流れ込んでくるものだ。
『そう……あなたがオハラの生き残り？』
私の言葉に、ニコ・ロビンは瞠目した。
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
