利用価値 ページ24
高笑いをしながら、クロコダイルが懐から鍵を取り出す。
「それはっ！」
「そうさ、これはその檻の鍵……」
彼はそれを、ポイと投げ捨てる。
そして、投げ捨てた先に小さな正方形の穴が空いた。
案の定、鍵は穴に落ちて、ちょうど下にいたバナナワニが飲み込んでしまった。
「あぁっ！鍵が！」
「なにぃ！？ビビ！勝て！」
「無茶言うな！」
そんなふうに騒いでいると、私たちを餌と認識したらしく、バナナワニはのそのそと部屋に昇ってきた。
必然的に壁は壊れ、その隙間から海水が流れ込んでくる。
「さぁどうする、ミス・ウェンズデー。今から急いでアルバーナに向かえば、万に一つくらいは反乱軍を停められる望みもある。逆にこいつと戦い、仮にテメェが勝てたならこの小物海賊共を救えるかもしれねぇ。二つに一つだ。……どちらにしろ望みは薄いがな。
……それと、A。テメェにはこいつをくれてやる」
そう言って、クロコダイルは私に小型の酸素ボンベを渡してきた。
「ダウリッヒ王国には利用価値がある。俺がアラバスタを手に入れたあと、同盟を結ぶのさ。歴史ある砂漠の国と、比類なき軍事大国の同盟だ。こいつは世界を動かせる……。
テメェがダウリッヒの頂点にいれば何かと都合がいいだろう？一度敗北を知った奴ほど、恐怖で縛りやすい」
『……なるほどね。合理的だわ』
私が生きていたこと、そして13年前の革命が陰謀だったことを、王下七武海のクロコダイルが発表すれば、私をダウリッヒ王国の女王とし、アラバスタとの同盟を結ぶことも容易い。
そうすれば、クロコダイルはこの世界の武器庫であるダウリッヒを手中に収めることが出来る。
彼が求める“軍事力”を補強するにはふさわしい選択だ。
「この俺の野望のために生きろ、A。死ぬことは許さねぇ」
『急にプロポーズじみたこと言わないでください。さっきまで殺意ダダ漏れだったくせに』
「プロポーズか……そう受けとってもらっても構わねぇぜ、俺は。相手がテメェなら悪くねぇ」
『なっ……』
不意に、先程までより糖度を孕んだ笑みを浮かべる彼に、私は二の句が告げなくなる。
「ちょっと！なんで敵相手にちょっと照れてんのよ！」
『痛い！？』
自分の頬に熱が集まるのを感じていると、ナミの猛烈なチョップが後頭部を襲う。
『いや、これは不可抗力！だって聞いてナミ。私、秘密結社の社長(並じゃない財力)(頭脳派)(強い)に求婚されちゃった』
「……許す！」
『よし！』
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
