昔の話 ページ23
「13年前……と言えば、ダウリッヒ王国の革命か？昔は武器の輸出だけで成り立っていたらしいが、今じゃ世界有数の軍事大国じゃねぇか。革命が成功して、革命軍のリーダーだった王の弟が、新しく王位についているはずだ。
確かに、先代王の子は死んだことになってるな」
スモーカーが記憶を辿るようにしてそう言う。
それにゾロも相槌を打った。
「あぁ、それだ。なんでも流通してる質のいい武器は、大体がダウリッヒ製らしい。酔っぱらいの言うことだと思ってたが、まさかホントに居るなんてな」
「それにしても、なんで王子なんて嘘ついてたんだ？」
ウソップが私に問いかける。
『そんなの、次の国王が女だなんて知られたら、周辺国や海賊連中が舐めてかかってくるからに決まってるじゃない。
……ま、革命と銘打った叔父上の陰謀で、私が性別を隠してきた意味も無くなっちゃったけどね』
私は苦く笑う。
13年前、まだ3歳の頃、突然両親や側近たちが叔父の手によって殺され、私一人が生き残った。
ダウリッヒ王国の王位と、さらなる領土を欲していた叔父は、戦争をせず、武器の輸出だけで満足していた父が許せなかったらしい。
「この国はもっと強くなれる！」「この海の覇者は海賊たちではなく、我が王国だ！」などというプロパガンダを掲げて、叔父は革命を成功させた。
おかげで父は悪政を敷いていた暗君扱い。
息子として育てられていた私も、ついでとばかりに処刑……されるはずだった。
『部長……今の上司がね、助けてくれたの。まだ子供なんだから、処刑はやめてくれって。その上司ってのが王国の影部隊……つまり暗殺部隊の隊長だったから、小さい頃は暗殺者として育てられたんだ。表向きは死んだことにしてね。
……でも流石に、親を殺した人の命令に従って生きるのって精神衛生上宜しくないじゃない？部長が気を利かせて、叔父上を裏切って発足したのが、海上使用人派遣協会ってわけ。
本当は内緒の話なんだけど、王子時代に世界会議で顔を合わせたことのあるビビにはバレちゃったから、うっかり話しちゃって。あは』
「そりゃ気づくわよ！1回目に会った時は王子だったのに、その4年後には護衛として世界会議に来ている子がいたら不思議に思うわ」
『お互い2歳児だったのに、よく覚えてるよね……』
檻の内外とは思えない雰囲気で会話していると、突如笑い声が上がる。
「クハハハ！ダウリッヒ王国の王女か……そいつァ良い。……テメェらにチャンスをやろう」
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
