誰の味方か ページ21
『どうしてこうなった……』
拝啓、職場の皆さん。
私は今、海賊一味と海軍大佐と共に、海楼石でできた檻の中に閉じ込められています。
私がここで死んだら、私の貯金は全部葬式代にしてください。お前らには1ベリーも渡さねぇよ。
敬具、っと。
「何縁起でもないもの書いてんのよ！」
『わぎゃっ、痛い！』
私が床に這いつくばって遺書をしたためていると、後ろから結構な高火力で拳骨が落とされた。
振り返れば、ナミが般若のような顔をして私も見下ろしているではないか。何それ怖い。
「そんなもの書いてる余裕があるなら、Aもここから出る方法考えてよね」
『いやいや無理でしょ。海楼石の強度はご存知？たとえ大砲をぶち込んだとしても壊れやしないのに、生身の人間と能力を封じられた能力者だけでどうにかできるものじゃないの。
ここを出たいなら、何とかして鍵を奪うか、ここに閉じ込めた張本人にお願いして出してもらうしかないんだよ……まぁ、出してもらえる確率は限りなくゼロに近いんだけど』
「よくわかってるじゃねぇか、A」
私がナミに説明していると、聞き覚えのある重低音ボイスが響く。
「「「クロコダイル……！」」」
「スパイごっこは楽しかったか？A。しかし意外だな。テメェはもっと賢い女かと思ってたぜ。少なくとも、どちらにつくのが正解か、見誤る真似はしねぇと思ったが」
『過大評価ですよ。私は、雇われの身なので』
「ならこうしねぇか。俺が通常の依頼料の倍出そう。だから俺につけ、麦わらの作戦を、今ここで話せ」
『……っ』
クロコダイルは意地の悪い笑みを浮かべて私を見据える。
正直、自分の身の安全を図るならここで彼の提案に乗るのが得策だ。
けれど、ほんの短時間とはいえ、ルフィ達一味の、純粋にこの国を守りたいという思いに触れてしまった。
エースに託されてしまった。
そして何より、ネフェルタリ・ビビ……彼女の愛国心を、“知っている”からこそ、この提案に乗るわけにはいかなかった。
『……残念ですが、それは出来ません。信用問題に関わってきちゃうのでね』
「……クハハ、そいつァ残念だ。……ここで死ね」
クロコダイルが剣呑な表情でそう告げる。
初めて正面からぶつけられるその明確な悪意に、軽い寒気を覚えた。
私が息の根を止められる覚悟をした、その時だった。
「クロコダイルっ！」
牢の正面にある大きな扉が開き、一人の少女が姿を現した。
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
