合流 ページ19
『んん……よく寝た』
ベッドの上で伸びをしながら、眠い目を擦る。
窓の外を見れば、既に日も高く、もうすぐ昼になろうかという時間帯だ。
昨晩は、あの後私に貸し与えられた部屋で直ぐに寝てしまった。
敵陣だし、結構ショッキングな事件を目にした直後だし、寝れないかも……と危惧してベッドに潜ったが、それは杞憂に終わる。
誰だ、図太い神経って言った奴は！適応力があるとお言い！！
……とにかく、今日も今日とて情報収集に精を出さなければならない。取り敢えず昨日の成果を書面に纏めていると、おもむろに外が騒がしくなった。
「出てこい、クロコダイルー！！ぶっ飛ばしてやるー！！」
それは年若い男の声。
下手したら少年と言ってもいいような、まだあどけなさの残る声の主は、なんと、この国じゃ英雄扱いな七武海の名を堂々と叫んでいる。
声の方向からしてカジノフロアにいるのだろうか。
『全く、どこの命知らずよ……』
潜入中の私が言えた義理では無いが、何もこんなに生き急ぐことはないだろうに。
私が姿も見えない彼に同情心を抱くと、それに被せるように若い女の声。
「こぉらルフィ！あんたまたひとりで突っ走って！」
「痛ってぇ！何すんだナミ！」
多少距離のあるこの場に居ても確かに聞こえるその会話の中で呼ばれたのは、私が合流するはずの男の名だった。
『……どうしよう、絶対マトモじゃない奴来ちゃった……』
あのエースの弟だから、世間知らずなタイプであったとしても驚きはしないが、ここまで命知らずだとは。
これは急いで合流してルフィの暴走を食い止めるべきだ。
クロコダイルとぶつかり合う前に、海兵や何かに捕まってしまったら元も子もない。
大急ぎで荷物を纏め、全力ダッシュでカジノフロアへ向かうと、再びルフィの声が聞こえる。
「そういや、エースの友達もここに来てるって言ってたな……確か名前は……もがっ！？」
『ちょっと待てぇ！！』
間一髪、名前をクソデカボイスで叫ばれる前にルフィの口を封じることに成功した私は、フゥ、と息をついた。
カジノの客たちの目線を集めたのは一瞬で、直ぐに皆自分たちのゲームに戻っていく。
「何すんだおめぇ！」
『それはこっちのセリフ！こんな衆人環視の中で名前を呼ばれたら、私の正体が向こうにもバレちゃうでしょ！？』
「いいじゃんか別に！お前がAだろ？一緒にクロコダイルをぶっ倒してくれるってエースが言ってた！」
『もう黙って！？』
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
