常識的な感覚 ページ18
Mr.3は神妙な面持ちで、自らに課されていた任務の失敗を語る。
どうやら情報の錯誤があった様子だが、失敗は失敗。それも、抹殺対象だった麦わらの一味と王女ビビの、全員を生きてこの国へ逃してしまったとの事で、それを聞いたクロコダイルは珍しく声を荒らげていた。
クロコダイルはおもむろに立ち上がり、Mr.3を宙吊りにする形で首を締め上げる。
すると、みるみるうちにMr.3の体から水分が吸い取られていき、ミイラのような風貌へと変わっていった。
『これが、スナスナの実の力……』
王下七武海の一角である男の持つ悪魔の実の力だ。
生半可なものでは無いことは理解しているつもりだったが、こうして実際に目の当たりにすると、その恐ろしさを嫌でも理解させられる。
もし私が彼の計画を阻もうとしていることがバレたら、もれなくミイラだ。
み、水……！と呻きながらバナナワニのいる水槽へ落とされて行ったMr.3を見ながら、私は震える体をそっと抱いた。
「とにかく。この作戦は長きに渡るバロックワークス社の集大成だ。お前らも行け、俺たちの理想郷は目前だ。
……もう、これ以上のトラブルはごめんだぜ……？」
「っ、お任せを、社長！」
「やーったろうじゃないのよォ！」
「楽しんできたまえ」
クロコダイルの一言を皮切りに、幹部連中は地下を後にする。
自分たちの仲間が殺された直後だと言うのに、狼狽するどころか、寧ろ士気を上げているあたり、それだけ歴戦の猛者たちが揃っている証左だろう。
「……らしくねぇな。怖いか？俺の能力が」
依然として震えの止まらない私を揶揄うように、クロコダイルは私の頬に触れた。
『……そりゃあ怖気付かないのも難しいでしょう。目の前で人が殺されて』
「幼少期から人を殺して生活してきたって女の言うセリフじゃねぇだろう」
『仕事でやるのと、偶発的に殺人現場に出くわすのじゃ、全然衝撃度が違うんですよ。私は常識的な感覚の持ち主なので』
「常識的な感覚を持ってたら、この俺とまともに顔を合わせて話すなんてできねぇと思うが」
『……？』
私が首を傾げると、クロコダイルはため息をつく。
「テメェのそういう所が人を誑し込むんだろうな」
『なっ、誑し込むなんて失礼な！そもそも何を見てそう思ったんですか！？』
「その間抜けな面以外に何がある。ギャーギャー言ってねぇでさっさと部屋に戻れ。ガキは寝る時間だろう？それとも夜伽でもしてくれるのか？」
『よっ……！？しないわ！！』
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
