嘘八丁 ページ15
『……私の目的？』
「そうさ。裏社会じゃ名の知れたテメェが、まさか観光目的でこの島に来たわけじゃねぇだろう？」
『まぁそれはそうなんだけど……』
あなたの秘密計画を暴き、阻止するために動いていますだなんて口が裂けても言えるわけが無いこの状況下、私は気まずくなって目をそらす。
「初めは火拳のエースとの旅の一環で立ち寄っただけかとも考えたが、奴と行動を共にしていないことを鑑みるに別の目的があると見たほうが自然だろう？」
『あは、賢い人の相手は苦手なんだよなぁ。人の事情を勝手に推察しないでくれると助かる……怖すぎるって……』
「さっさと吐け。俺としてもデカい計画を控えてるんでな、不穏分子は極力潰しておきたいのが本音だ」
さて、どうするか。
正直に話せば私の命は無いし、恐らくルフィとその一味たちの計画にも支障が出てしまう。
クロコダイルには、彼の計画が滞りなく進んでいるという勘違いをしてもらわなければならないのだ。
しばらく思案し、私は重々しく口を開いた。
『あなたの弱みを握ってこいと、ある人からのご依頼でね』
全くの嘘っぱちだが、それっぽく微笑む。
『私が、使用人とは名ばかりの、後暗い仕事をしてることはご存知でしょう？今回もその系譜です。守秘義務があるので依頼人のことは話せませんけど、心当たりは腐るほどあるのでは？
エースと居たのはその直前まで彼からの依頼を受けていて、行先が同じだったので送ってもらっただけの話です』
「……なるほどな。筋は通ってるが……簡単に俺の弱みなんざ握れると思うか？それを知って、生きていられるとでも？」
『握らなきゃ減給なんですよ。こちらも生活がかかっているので、努力はします……ってな訳で私をそばに置いてください。3日とかでいいですよ』
私がへらりと笑うと、クロコダイルも喉を鳴らして笑った。
「クハハハ、図々しい奴だ。やってみればいいさ、その気になればテメェなんざいつでも殺せる」
『ヒェッ、物騒』
彼は満足気な笑みを浮かべながら私を解放し、部屋を後にする。
足音が遠ざかるのを確認し、私は大きなため息をついた。
『はァァ、危な……』
何とかやり過ごせたが、恐怖の緊張感でどうにかなりそうだった。
クロコダイルがその気になれば、私の命なんて赤子の手をひねるより簡単に吹き飛ぶので、言動に気をつけつつ、彼の作戦概要を盗まなければならない。
エースの願いを叶えるのは、なかなかに骨が折れそうだった。
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
