大勝利案件 ページ14
『アーッハッハッハ！今回も大勝利っ！』
ジャラジャラと音を立てて、大量のチップが私の手元に集まってくる。
同じ卓には苦い顔をしたほかのギャンブラーと、営業スマイルのディーラー、そしてその卓を囲むように大勢のオーディエンス。
「誰だよあの女、勝ちすぎじゃねぇか！？」
「本当にな。イカサマじゃねぇのか？」
「いや、しかしクロコダイル様のお連れ様だぞ。そんな姑息な手を使うわけないだろ」
「確かに……」
ざわめく人並みを分けて、クロコダイルがこちらにやってくる。
手には赤ワインが入ったグラスが2つ握られていた。
「クハハ、大分お楽しみのようだな」
『いやぁ、お陰様で！こんな豪遊したのは初めてなので、楽しいです！やめられなくなりそう！！』
「テメェならいつでも歓迎してやるさ。今夜の勝利を祝って乾杯と洒落こもうか、お嬢さん」
そう言いながら、クロコダイルは私にグラスを差し出した。
ありがたく受けとり、私たちはグラスの縁を合わせて乾杯する。
チン、といい音がなった。
「ところでA、今夜の予定は？」
『ありませんよ！って言うか宿無しです！海軍を撒いてきたので！』
「それなら丁度良いな。ここの部屋をひとつ貸してやるから、泊まっていけ」
『えっ、いいんですか！？』
クロコダイルの提案に、私は目を輝かせる。
実際問題宿をどうするかは悩みの種だったので有難い。
問題はここが敵陣真っ只中なことくらい。
……ま、些事だね！
「決まりだな。案内しよう」
私は再び彼に肩を抱かれ、カジノフロアを後にする。
奥の扉に通され、ズンズンと廊下を進んでいくと、要人客用に作られたと思しき部屋が並ぶ場所に続いていた。
クロコダイルはその扉のうちのひとつを開けて、私を招き入れる。
『わぁ、すごい！広い！』
「お気に召したなら何よりだ」
『ベッド天蓋付きじゃん、わっほーい！』
荷物を投げ捨てて、大きくてふかふかのお嬢様ベッドにダイビングする。
クロコダイルは呆れた顔でベッドの傍に立ち、私を見下ろしながらため息をつく。
「テメェはどうも危機感が足りてねぇな」
『はい？』
突如、クロコダイルが私に覆い被さるようにしてベッドの上にのしかかってきた。
両腕を頭上で拘束され、喉元に大きな鉤爪を突きつけられる。
「時間はたっぷりある。お前の目的を話してもらおうか、A」
ニヒルな黒い笑みを浮かべ、彼はそう囁いた。
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
