バレてる……ってコト！？ ページ13
『ふぅ、走った走った……。取り敢えず水〜、あとは甘いものがあればさらに良き〜』
ふんふふん、などと調子ハズレな鼻歌とともにキラキラした街を歩いてみるが、どこの店も高級感があって小市民には入りづらい。
どこかにファストフード店とか居酒屋とかないのか。何だこのセレブシティは。
『どこかに高級店でも物怖じせず完璧なエスコートしてくれる金と名誉を着て歩いてるような年上男性とか居ないかな！居ないか、居るはずないな……やばい、自分で言ってて悲しくなってきた』
「付き合ってやろうか。なァ、玉依のA」
冗談交じりに独りごちると、すぐ側から落ち着いた男の声が。
『誰ですか私の不本意な二つ名を呼ぶのは……って、ヒェッ』
「随分コソコソと動いてるみてぇだが、アラバスタに何の用だ？」
『……サー・クロコダイル……！』
「クハハハ、何を驚いてやがる。俺はテメェが火拳のエースと共に今日この国へ上陸したこと、海軍と接触したこと、全て把握しているんだが、テメェと来たら間抜けなもんだなァ」
『うわぁ、全部バレてる……！』
「隠そうって気もなしか。気に入った。招待してやろう、レインディナーズのカジノへ」
クロコダイルはそう言いながら私の肩を抱く。
こういうエスコートって普通は腰を抱くんだろうけど、私の背が小さいのとクロコダイルの背が高いのが相まって、それは実現不可能らしい。
『マジですか！？』
「クク、テメェには人を疑うって頭がねぇのか？俺がお前を殺すかもしれねぇとは思わなかったか？」
『え？私これから殺される？まだルーレットで一攫千金してないのに！？』
「……いや、殺さねぇよ。たった今殺す気も失せた」
『それがいいですよ！所持金5000ベリーの小娘ひとり殺したって、なんの得もありませんって！』
「そいつァどうだかな」
クロコダイルはかわいた笑みを浮かべながら、手付きは優雅に私をカジノへ導いた。
正直、今回の事件の首謀者とこんなに接近していいものかと悩まなかった訳じゃないが、目の前にカジノという餌を吊るされた私が誘惑に勝てるはずもなく。
難しいことを考えるのは、多分明日の朝からでも遅くは無いので、取り敢えず今晩は折角のセレブ気分を楽しもうと決意した。
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作者名：涼風音欧 | 作成日時：2022年10月8日 3時
