86場 紹介先 ページ8
ライトが点く。
ヴィレントとエルトが、豪勢な客間のソファーに座っている。
そこに、一人の若者が上手から入ってきた。天花寺だ。
「お待たせ致しました。商業連合総帥代理、アルベルト=カートレッドと申します。わざわざ隣国よりお越し頂き、恐縮です」
「いえ、本日はお時間を作って頂きありがとうございます、カートレッド殿。私はルシフェリア王国カルセドニー自警団経理及び作戦立案担当のヴィレント=フェルナンドです。こちらは団長補佐のエルト=ランス」
「初めまして。よろしくお願い致します」
エルトとヴィレントが立ち上がり、それぞれアルベルトと握手を交わす。
三人がソファーに腰を下ろすと、早速アルベルトが話を切り出した。
「彼から話は聞いていますが……我々カートレッド商業連合の財の一部を、そちらの自警団の軍資金の一部として出資して欲しい――という事でしたね?」
「はい。我々は近々、女王・マリア=ルシフェルドに対して革命を起こす計画を立てています。手遅れになる前に」
「……やはり酷いですか」
「貧民街で餓死者の遺体が現れ始めました。このままだと南区は全滅です。――そして我々は、二度と五年前のような悲劇を繰り返す訳にはいかないのです」
「……なるほど」
アルベルトは考える仕草をした。
「しかし、我々も隣国にただ出資する訳には参りませんしねぇ」
「存じております。――現在、ルシフェリアとこのアメシスト帝国の輸出入には、関税がかかっていますね?」
「ええ。それだけではなく、連合内での荷物の移動にまで取られてしまうのですよ。たかが関税にあれだけの支払うなど、馬鹿馬鹿しい……前王の代は、あの4分の1の金額で済んでいたのに」
その愚痴を待っていたかのように、ヴィレントは言った。
「私共が王朝を倒し、新政府を発足すれば……関税精度は撤廃させようと思っています」
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作者名:月下 | 作成日時:2018年7月1日 21時