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108場 執事長 ページ31

ライトが点く。

レイスの私室よりも豪奢な部屋。マリアの私室のようだ。

気怠げに窓の外を眺めるマリアの背後から、滑るように執事の格好をした月皇海斗が現れた。

「始まりましたね」

「……執事長としては頂けぬ発言じゃな、ヨゼフ」

「おや……失礼致しました。我等が女王、マリア=ルシフェルド陛下。しかし――貴女はどこかで、この展開を待っていたのではありませんか?」

マリアがヨゼフを睨む。

「何故ならばこの国は貴女の――正確には『ルシフェルド家のものではなかった』から、貴女はそれを、《本来の持ち主》へと返したかった」

「お主、本気で言っているのか?」

マリアの質問に、ヨゼフは肩を竦めた。

「少なくとも、冗談のつもりではありませんが?」

ルシフェリア王国(このくに)が建国当時は別の名だったとしても、『今は』ルシフェリア王国じゃ。そして妾は、その国に嫁いだ女王・マリア=ルシフェルド」

「存じておりますとも、我等が女王陛下。貴女がマリア=ルシフェルドになる《前》、マリア=ミゼラルだった頃からね」

「――その名、二度と口にするなよヨゼフ=キッド。次は《お主の番》じゃぞ」

マリアは冷ややかに脅したが、ヨゼフは小さく微笑んだ。

「心得ておりますとも、我が主よ」

「……死にたがりが」


暗転――

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作者名:月下 | 作成日時:2018年7月1日 21時

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