107場 警官 ページ30
『綾薙祭をお楽しみの皆様にご案内申し上げます。只今を持ちまして、『亡国のネメシス』の上演を再開させて頂きます。皆様には大変なご迷惑をおかけして申し訳御座いません――』
その後も型通りの謝罪アナウンスが流れる中、学園の入り口を警備している警官二人は困り果てていた。
なんせ情報が入って来ない。直接被害者たる少年少女の状況が見れる訳ではないのだ。
舞台の役者の剣がレプリカから本物にすり替えられたとかインカムのオープンチャンネルから流れてきたのに急に切れるし。
「あ、再開するんですねぇ。大丈夫なんでしょうかねぇ」
「さあな。ま、やるって事は何か勝算があるって事じゃねえの」
後輩っぽい警官の質問に、先輩っぽい警官がかったるそうに答える。
「まあそうなんですけどねぇ。でも何だか囮に使うみたいで可哀想ですねぇ」
「実際そうなんだろうさ。高校生にして億万長者とか言うからどんな奴らだよと思ったが、至極真っ当そうな兄妹じゃねえの」
「瀬名先輩も何かと気にかけてるみたいですし、色々あるんでしょうねぇ」
「あー、瀬名なあ」
先輩警官は一つ頷き、腕を組んだ。
「……ま、なんだかんだ言って根は良い奴だからな」
「先日の夜勤でご一緒したんですが、ご飯を奢って下さいまして」
「そーいうとこあるよなー。――ま、何はともあれ」
二人は門の外から中を見据え、気を引き締める。
「俺らの仕事は怪しい奴を外に出さない事だ。気ィ抜くなよ」
「了解です」
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作者名:月下 | 作成日時:2018年7月1日 21時