【スタミュ】第三幕／夢と星と、そしてほんの少しの毒 (ページ22)

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100場　精巧ページ22

「やあ、空閑君。揚羽君が下手(こっち)待機じゃなくて良かったね」

Aと空閑が下手袖に戻ってきた瞬間、影夜はそう言った。

「……すみません、勝手な事をして」

「言い訳と弁解をしないのは立派だけど、理由を話さないのは感心しないな」

影夜は優しく笑いかける。ただし、眼は笑っていない。

「台本から離れた演技をした理由は？」

「――これです」

言うと、空閑は腰から下げていた剣を抜いた。

精巧に作られた偽物の剣。舞台袖は暗い為、まるで本物の様に見える。

「……いや」

そう声を上げたのは、今まで面倒そうに見守っていた警官の瀬名だった。空閑の持つ剣を睨み付け、素早く近付く。

「……これ、どこで仕入れた？」

「十数年前、『共同上演(シャッフルショー)』の演目に『亡国のネメシス』が追加された時に購入されたものだと早乙女さんが。ああ、そう言えば今年はメンテナンスに出したって双葉さんが言ってました」

Aが答えると、瀬名がもう一人この場にいる警官を呼んだ。

名を――九曜(くよう)天理(てんり)。

「九曜」

「うん？」

「この剣のメンテナンスした会社を学園に問い合わせろ。そんでその会社、徹底的に洗い出せ」

「いいけど、何で？なんでもない事で捜査権限は得られない」

「恐らく、そのメンテナンスで剣がすり替わってる。これは『本物』だ」