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99場 幼馴染 ページ21
一方、ステージの上。
恐らく空閑のアドリブで一番しんどい思いをさせられたであろうAだったが、そんな事は感じさせない見事な演技を見せていた。
空閑のプロポーズじみた台詞の後、Aは数度瞬きし――。
そして、笑ったのだ。
決してエルトを小馬鹿にしているとか、そういう類いの笑みではない。
幼馴染が言った冗談に対して笑うように、ミスリルは肩を震わせた。
「フフフ。どうやら私は、自分が思っている以上に何処かへいなくなりやすいみたいね」
「リル！」
「そんなに怒んないで、エル。大丈夫。約束するよ。私は此処にいる」
「……本当に？」
「残念ね、そんなに団長補佐に信用されてないなんて」
そう言われ、空閑――エルトはやれやれと笑いながら首を振った。
手のかかる幼馴染にそうするように。尤も、この場合手がかかっているのは二つの意味でエルト(空閑)なのだが。
「悪かったよ、リル」
「わかればよろしい。――さあ、行こうエル。私達の望んだ未来を果たす為に」
「ああ。――俺達の無念を晴らす為に」
そして、ミスリルが突き出した拳にエルトが拳をコツンとぶつける。
二人はそのまま、何かを振り切るように足早に退場した。
暗転――
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作者名：月下 | 作成日時：2018年7月1日 21時
