【スタミュ】第二幕／夢と星と、ほんの少しの毒 (ページ10)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:9,437 hit

48場　救急車ページ10

何処からか、救急車のサイレンが聞こえてくる。

「救急車か……」

暗い顔で、辰巳が呟く。

「助かると良いですね……」

隣にいた申渡も沈痛な面持ちで頷き、そう口にした。

救急車のサイレンはそのまま近付いてくる。

そして――音が止んだ。

「……止まったね」

「……ええ」

近くの家に倒れた人がいるのかもしれない。そう思うのは簡単だった。

しかし二人は嫌な予感に教われ、廊下に出た。教室の窓より、廊下の窓の方が道路に近い。

――救急車は、講堂裏の校門前に止まっている。

二人は顔を見合わせると、講堂へ走った。

朝のホームルーム直前という時間だからか、意外にも野次馬は少なかった。

辰巳は近くにいた女生徒に話しかけた。

「……何があったか、見てた？」

「特待生が倒れたんだって……。喉に何かあったみたいで、ずっと『喉が……』って掠れた声で呻きながら担架で運ばれてたよ」

辰巳と申渡は顔を見合わせた。

仮にAか優芽、鈴音の喉に『何か』があり出演出来なくなった場合、自動的に公演は中止だ。

男子と違い、女子には代役を立てない決まりなのだ。

「毒を盛られたかもって、他の特待生が言ってたよ」

「「毒！？」」

「主演の――ええっと、七種さん？のペットボトルのドリンクを飲んだら、喉を掻きむしって倒れたみたい」

噂好きの女の子の言う言葉なので、真実かどうかは定かではないが――それでも、二人はもう一度顔を見合わせた。

お互いの顔は、かなり青ざめていた。