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44場 盗難 ページ6
「今日の稽古は此処まで。解散！」
翌日。魚住の言葉に、全員で「「「ありがとうございました！」」」を唱和して三々五々帰宅の準備を始める。
「ん？」
Aが首を傾げ、鈴音が問いかけた。
「どうしたの？」
「いや、財布が……。忘れてきちゃったかな？」
「あら、財布無いの？ よく探した？」
「うん……」
再びバッグの中を探し始めるAから視線を外し、鈴音はそっと振り返った。
そこには彼女の予想通り、Aをチラチラ見ながらクスクス笑う集団。
千秋から来た女子達だった。ヘルプメンバーは、千秋学園の男子10名、女子10名で構成されている。
さてどうしようかと鈴音が悩んでいると、影夜が動いた。
どうやらAの行動と鈴音の目線、そしてさっきの会話で大体の見当がついていたようだ。
「君達」
「あ……先輩」
一人の女子が答える。
「Aの財布がなくなったようなんだ。この中の誰かが盗ったんじゃないのかい？」
「「はぁ！？」」
女子の内の数人が叫ぶ。鈴音も、あまりにも直接的な物言いに唖然とした。
「言いがかりじゃないですか！？ アイツがどっかに忘れただけでしょ！？」
別の女子がキレ気味に影夜に詰め寄ると、影夜は微笑んだ。
どこまでも冷たい怒りを両眼に湛えながら。
「そうかい？ なら警察を呼んで全員の身体検査をして貰おうか？ 幸いな事に、僕の知り合いに警官がいてね。彼なら、学校側にも配慮して来てくれるだろう」
スマホを取り出して操作する影夜を見て、背後から小さな呟きが聞こえた。
「……こっわ……」
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作者名：月下 | 作成日時：2017年12月23日 22時
