80場 来客 ページ43
ライトが点く。
何処かの玄関。エルトと革鎧を身に付けた男が会話しているのを見ると、どうやら自警団本部のようだ。
ドアからトントントン、とノックの音が聞こえる。
「はいよー」
エルトと会話をしていた団員(星谷)が返事をして、ドアを開ける。
その瞬間、エルトと団員は凍り付いた。ドアの前に立っていたのが、フードを目深に被った黒ローブの人間だったからだ。
「……お客さん、何の用だい？ 此処はカルセドニー自警団だぜ」
「……団長殿とお話がしたいのです」
「団長と？ お客さん、名前は？」
「……団長殿に直接名乗ります」
団員はエルトを見た。エルトが頷く。
団員が再び口を開く。
「悪いがお客さん、お引き取り願えるかい？ 名前を教えてくれないんじゃあ、団長に取り次ぎようがねぇ」
「！ 困ります、どうか話だけでも――」
「それに今団長は外出中――」
「呼んだ？」
開かれたドアのすぐ傍に、少女が立っていた。ミスリルだ。
「だ、団長……！」
「ただいま。……こちらの方は？」
「団長殿にお話があって参りました」
そこで初めて、今まで一言も発しなかったエルトが喋った。
「……おい。此処にそんな怪しい格好で現れて、そんな我が儘が通ると思ってるのか？」
「わかりました」
エルトの言葉を完全に無視し、ミスリルが言った。
「リル！」
「私達はカルセドニー自警団よ。大切な市民の話に耳を傾けるのも仕事でしょう？」
「……わかったよ。お前には敵わない」
ミスリルはエルトに向けて微笑み、黒ローブを連れて退場した。
暗転――
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作者名：月下 | 作成日時：2017年12月23日 22時
