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43場 説得 ページ5

「……どういう事でしょう?」

「覚醒剤というのは、危険なモノである。時として人命を奪う程の。それが見付かっていないにも関わらず、催しを予定通り執り行うなどという所業は異常以外の何物でもなかろう。……何事においても、まず優先されるべきは人命なのだから」

「……」

影夜は考える。

確かに、綾薙祭の中止や延期で命が救えるなら安いものだろう。命とは、何物にも代えられないものだから。

しかし、現に綾薙祭は開催される。

理事側は、恐らく今回の報道でのイメージ回復を綾薙祭でするつもりだ。

様々な噂が飛び交う校内を敢えて公開し、そして最高の演技を生徒が見せる事により、潔白を証明する。

『隠された覚醒剤など此処にはない』と理事側が考えている以上、関係者であっても生徒ではない影夜に決定を覆すのは難しい。

――余程の《何か》が無い限り。

「……仰る事は解りますし、納得もしています。けれど、理事の決定は僕にはどうしようも……」

「無論、そうであろう。無理に降板させる気は毛頭無い。……気を付けてくれ、影夜殿」

「はい、必ず」

次の瞬間、風呂場の方で何かにぶつけたような音と、「いぃったぁーーーーー!!」というAの絶叫が響いてきた。

「……大丈夫か、あれ」

切国が呆れ7割心配3割くらいの顔で影夜に尋ねると、彼は頷いて笑顔で答えた。

「ああ。あれ月に2回くらいやらかすから」

「……」


切国は心配1割増くらいの表情になると、風呂場へと続く廊下に視線を向けたのだった。

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作者名:月下 | 作成日時:2017年12月23日 22時

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