69場 水 ページ31
ライトが点く。
立派な回廊。レイスが上手から登場する。舞台中央まで進んだ所で、慌てた様子の執事(月皇海斗)が同じく上手から追いかけてくる。
「レイス様!!」
レイスは足を止め、執事の方を向いた。
「どうした? そんなに急い――」
「一体どちらにいらっしゃったのですか!? ショウと共にあちこち探し回ったのですよ!」
「……それはすまなかった。街の様子を見に行っていたんだ」
執事は絶句した後、驚愕の表情で尋ねた。
「…………街……って、戦場跡にですか!? お一人で!?」
「ああ。王子だって事は勿論伏せ――」
「当たり前です!! 今がどういう情勢か御存知でしょう!?」
怒る執事に、レイスは弱々しく反論した。
「……だから素性は伏せたってば」
「そういう問題ではございません!! せめて供を連れて行くとか――」
「悪目立ちしてしまうじゃないか」
「自覚がおありならなさらないで下さい! 陛下がお知りになったらどうなさるおつもりです!」
「……あの人と僕は血で繋がれていない。ただの水だ。気にする事はないさ」
「限りなく血に近い水でなければなりませんよ。先代王妃が亡くなられた後、後妻として迎えられたのがマリア様……。先代国王も崩御遊ばされ、王位は幼かった貴方様ではなくその義母のマリア様に引き継がれました。貴方様が成人なされた時、陛下の王位は自動的に貴方様へと移るのですから」
レイスは少し複雑そうに頷く。
「……ああ、解っている。それより、何か用があって探していたんじゃないの?」
「いえ、お姿が見えませんでしたので……騒ぎになる前にとお探ししておりました」
「そうか、ありがとう。……部屋に戻るよ」
「では、お供致します」
二人は舞台上手へと退場していく。
暗転――。
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作者名:月下 | 作成日時:2017年12月23日 22時