64場 少年 ページ26
「ふむ……。綾薙の学園祭は毎年観ているが、袖から観るのは客席から観るのとは違った驚きがあって良いな……」
長船が連れてきた幹部の一人がそう呟いた。
40代くらい……いや、もう少し若いだろうか。白髪が似合う、色白の美しい男だ。若い頃はさぞやモテただろう。
「……頼むから『これからは舞台袖で見たい』なんて言い出すなよ、
彼の近くにいた、長船と同い年くらいの褐色の男が、苦い顔でそう進言する。
「……
「…………あー、頼りになる上司？」
「何故疑問形なんだ伽羅坊……！！」
突っ込むのそこなんだ、と星谷は思った。
伽羅坊(さすがにニックネームだろうが)さんは、これっぽっちも『頼れる上司』なんて思ってないぞ。絶対。
「ところで、少年。幕間が終わったらここのライトを点けるんだったな？」
鶴丸と呼ばれていた男――確かフルネームは鶴丸
「あ、はい！ タイミングはカウントします！」
客席から見えるかどうかギリギリの位置にいた虎石から、ゴーサインが出る。装置の転換が終わったようだ。
「鶴丸さん！ 2,1,点灯です！」
ぱっ、と舞台上のライトが全て灯った。
そこでは一人の少女が、男を抱えて泣いていた。
――動かない死体に囲まれて。
13歳のミスリル＝フレストリアだ。演じているのは、四鬼優芽。
「父さん……嫌だよ……父さん……！」
そこで、上手から少年が出てくる。13歳のレイス＝ルシフェルド、もとい(18歳のレイス役である揚羽と髪色を合わせる為に)ウィッグを被った那雪だ。
呆然と観客席を見回している。その後でステージ上のミスリルに目を止めた。
近付き、レイスが声をかける。
「……君も、内戦に参加したのか？」
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作者名：月下 | 作成日時：2017年12月23日 22時
