63場 女王 ページ25
「始まっているようだな」
堀川国伏が、小声で隣の席にいる弟の切国に話しかけた。
「……観劇中の私語はマナー違反だぞ、兄弟」
「おお、そうであったな」
国伏はたった今、Aと揚羽の歌が終わった直後に会場に入ってきたのだ。仕事の都合で間に合わなかったらしい。
ついでに、会場の前に立っていた警官に『色々』尋ねてきたところだった。
国伏がその事について考えていると、目の前に一人の少女が現れた。
いや、もしかしたら彼女は既にスタンバイしていて、スポットライトが点いただけかもしれないが。
国伏、切国、国広がいるのは二階席の最前列、やや上手寄りのほぼ中央だ。
ドレスを纏った一華鈴音が、ステージの戦いを眺めている。
「――結局、この王宮の前まで攻め込まれてしまったが……まあ良かろう。この内戦は、じきに終結じゃ。市民を指揮するカルセドニー自警団の団長と副団長が、揃って討ち死にとあってはのう……」
彼女は手すりに肘をついた。
「このルシフェリア王国女王である妾・マリア=ルシフェルドの王政は揺らがぬ。お前達は妾の駒に過ぎぬのじゃからのう。フフフ……」
鈴音――否、マリア=ルシフェルドがステージに背を向け、ゆっくりと立ち去る。途中まで追っていたスポットライトが消えた。
三人が再びステージに目を落とすと、市民兵と思わしき革鎧の兵士達が倒れていた。
黄金(に見せかけたただのプラスチック)の鎧を着込んだ王宮兵達が、剣を空中へ突き上げ叫ぶ。
「「女王陛下に栄光を!!」」
「「ルシフェリア王国に栄光を!!」」
舞台は暗転した。
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作者名:月下 | 作成日時:2017年12月23日 22時