60場 到着 ページ22
「おう。上から許可下りたのはお前らだけか？」
「ああ。……この少年が――」
影夜が一歩前に進み出る。
「七種影夜と申します。この度は皆様に大変なご迷惑をお掛けして、申し訳ございません」
そして、深々と頭を下げた。
「いえ、とんでもない。我々の仕事ですから」
そう言って男の一人が影夜に頭を上げるよう促す。
そこへ、また別の集団が現れた。
先頭の男は長船光忠で、他の者は影夜とAの亡き父が経営していた会社の幹部達である。
「影夜君！ 大丈夫かい？」
「ええ。わざわざすみません。……ですが、とても困っていて……手伝って頂きたいのです」
影夜が裏方のメンバーが足りなくてとても困っている事、そしてそれを皆に手伝って欲しい事を告げた。
「……影夜君。大体の事情は解ったけど、何の練習もしていない我々がいても却って邪魔になるんじゃないかな？」
長船が問う。
「練習しているメンバーで指示を出します。とにかく、このタイトルは人手がないと成り立たないんです。どうか力を貸して下さい」
影夜が再び頭を下げると、会社の幹部達が慌て出した。
「とんでもありません、坊っちゃん、顔を上げて下さいませ！」
「坊っちゃんと嬢ちゃんの頼みなら、この老いぼれ共も喜んでお手伝いさせて頂きますから！」
「ありがとうございます！ Aは準備の為に席を外していますが、あの子も喜ぶでしょう」
影夜の横で、瀬名が同僚と話し込んでいる。
「――何だって？ 冗談だろ？」
「本当だ。だからこそ上も、こっちに人手を割けないんだよ。本来なら共演者の護衛の方が優先事項だったんだからな」
「……まあ良い。頼りにしてるぜ」
「お互いにな。お前がこういうのに熱心だったのは意外だが」
それを聞くと、瀬名はふ、と笑った。
「……ガキのお守りは、昔から苦手なんでね」
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作者名：月下 | 作成日時：2017年12月23日 22時
