53場 理由 ページ15
「悪いが、七種兄妹は今日の練習には来ない」
放課後のレッスンルーム。稽古を始める前に魚住が言い放った。
「影夜が体調を崩して検査入院する事になり、両親がいない為Aも付き添っているとの連絡があった。明日は出席するとの事だった。その為、今日だけミスリルの代役を早乙女が務める」
「「はい！」」
返事をしたものの、一同は顔を見合わせた。
影夜が怪しいものを飲まされたのは(少なくとも綾薙陣と優芽、鈴音にとって)周知の事実である。
生徒を不安にさせない為の、警察あるいはAからの気遣いだろうか？
もしくは――犯人を炙り出す為に、わざと？
彼女ならどちらでも有り得るだろうな、と南條は考える。
早乙女が代役というのは、恐らくセリフと立ち位置の確認だろう、とも。
「聖」
「ん？ 何だい廉」
北原が顔を寄せ、南條に囁く。
「……理事の連中、どうしても綾薙祭をやりたくてあいつらに言わせてる――という可能性はあると思うか？」
南條としては全く予想外の推測だったが、確かにその可能性はある。
「人道的にその発想はどうかと思うけど、俺的には有り得ない話じゃないとは思うよ」
微妙に北原を詰る南條。
「ったく正気かよあの連中……有罪」
しかしそれに気付く様子もなく、北原は吐き捨てる。
「……本当にそう思う？」
いつの間にか隣に座っていた鈴音が、南條を見つめる。
「理事が魚住さんに、ああ説明しろって言ったと思ってる？」
「……さあね。まあ俺的には、魚住さんの性格上そんな事聞き入れないと思うけどね」
鈴音は何も言わず、ただ頷いただけだった。
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作者名：月下 | 作成日時：2017年12月23日 22時
