51場 聴取 ページ13
「ちょっといいかな？」
昼休み。教室で台本読みをしていた那雪と卯川に、誰かに声をかけられた。
二人が顔を上げると、そこに立っていたのは20代後半と覚しき男だった。私服の刑事だろうか。
「俺は
二人が顔を見合わせると、十条と名乗った男は慌ててこう付け加えた。
「勿論、君達に差し障りのない程度で構わないし、嫌なら黙っていてくれても構わない。どうだろう？」
「……僕達に、答えられる事なら」
那雪が恐る恐る答えると、十条は「ありがとう」と微笑んで手帳を取り出した。
「Aさんと影夜君は、二人から見てどういう人だった？」
卯川が答える。
「なんて言うか、キレると怖い感じでした。普段は温厚だし優しいけど、敵と見なした人にはかなり容赦ないっていうか……」
「味方は多いけど、敵も多いタイプかなって……」
那雪が付け加えると、十条は頷きながら問う。
「その『敵』に、心当たりはあるかい？」
「ヘルプで来てる千秋の女子10人です」
卯川が眉をしかめながら即答すると、十条の顔が険しくなる。
「どういう事か、聞いても？」
「Aさんの財布がそいつらに隠されたんです。四鬼さんと一華さんはAさんの味方ですけど、その他の千秋の女子は敵だと思います」
きっぱり言い切った卯川の言葉をメモしているのか、十条はしきりにペンを走らせている。
「では――彼女を舞台から下ろす為、刺激物を混入させる事は、やりそうかな？」
那雪は少し考え、答えた。
「……あまり考えたくありませんが……やりかねないと思います」
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作者名：月下 | 作成日時：2017年12月23日 22時
