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37場 敵対 ページ43

オーディションが終わり、此処からは本格的な練習が始まる。

本格的な練習とはつまり、千秋陣も合流しての立ち稽古などである。

そしてここから、千秋学園でヘルプとして呼ばれた裏方20名が綾薙に出入りするようになる。

「久し振りね、七種さん」

一人、稽古が始まる前にAに声をかけた者がいた。

恐らくは同学年の少女。可愛い顔立ちだが、目付きがややキツめだ。

「……ええ、そうかもね」

「どう? 男子校でちやほやされる気分は? さぞや優越感に浸れたでしょうね」

Aは溜め息を飲み込んだような顔で少女を見る。

「……優越感、ねぇ。別にそんな事はなかったけど。貴女達の事なんて思い出しもしなかったし」

さらりと言い返したAの言葉に、影夜が少々苦い顔をする。

「なっ……」

「そんな事にかまけている暇なんてないでしょう。私はこの演技をこうしたいとか、そういう事しか考えていなかったけど?」

「……見え透いた嘘ね」

「どう思うかは貴女の勝手だけど、事実は変わらない。……私達は役者よ。貴女達も。人の目を気にする余裕があるなら、自分の演技を気にした方が身の為なんじゃないの? そ――」

「A。ちょっといいか? ……優芽が呼んでるよ」

まだ言い募ろうとしていたAの肩に手を置いたのは、兄の影夜だった。

「……ええ。それじゃ」

「……」

少女は憎々しげにAの後ろ姿を睨んでいたが、やがて目を逸らした。

「……少し落ち着いてくれ、A。あの女のあの反応は、今に始まった事じゃないだろう」

「そうなんだけどね……。どうもイラッとしちゃうんだよねぇ……」

「なんて言おうとしてたのか、当ててあげよっか」

Aの背中に優芽が飛びつき、悪戯っぽく笑った。


「『そんなんだから、キャストから外されるのよ』――でしょ?」

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作者名:月下 | 作成日時:2017年9月30日 23時

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