22場 送迎 ページ26
「――お疲れ様、影夜、A」
「いつもありがとうございます、白鳥さん」
Aが礼を言うと、白鳥は薄く微笑んだ。
「練習は順調か? 体調は?」
「大丈夫ですよ。順調です。多分」
「ふむ……。A」
「はい?」
白鳥は流し目でAを見る。30を過ぎてはいるが、かなり整った若々しい顔である為、ちょっと目を見張るくらい様になっている。
「彼氏が出来たら二人で帰って来てもいいぞ?」
「はっ!?」
「冗談だ。さ、帰るか」
フ、と白鳥が笑い、車を発進させた。
Aは暫く凍り付いていたが、からかわれたと気付くとぷいっと顔を窓に向けた。
白鳥はそんなAを見て苦笑すると、車のラジオをつけた。
「――では、次のニュースです」
どうやらニュース番組が放送されているらしい。
「先日構成員の大多数が逮捕された暴力団――」
ブチッ。
「〜♪」
白鳥がチャンネルを切り替えた。控えめなクラシックが流れている。
「……すまん。嫌な事を思い出させたな」
「いいえ。気にしないで下さい」
影夜はすぐに首を振り、白鳥に向けて微笑んだ。
白鳥は小さく頷いたが、彼が気にしているのは明らかだった。
家に着くまで、3人は黙ったままだった。
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作者名:月下 | 作成日時:2017年9月30日 23時