16場 噂 ページ20
「「……!?」」
二人で暫く絶句した後、Aが急き込んで尋ねた。
「どういう事!?」
「しーっ!! これはトップシークレットなの!! ……最初は私も信じなかったんだけど……」
「能書きはいいから、本題を言って!」
「う、うん……。それが……あの指名手配された奴、暴力団から覚醒剤とか大麻とかMDMAとかの商売を任されてたらしいんだけど」
「……私が見たニュースでは、そんな事言ってなかったわよ?」
鈴音が怪訝そうにそう問うと、優芽は「さっきスマホのニュースで速報されてたの」と答えた。
「奴は綾薙の生徒達に、覚醒剤の味を覚えさせる気だったの!」
「学生を買える値段にする訳――」
鈴音の言葉を首を強く振って否定した。
「最初はタダなの。抜けられない奴が……まあ一回使ったら誰でも抜けられなくなるけど、そいつらを標的にして稼ぐつもりだったと供述してるの」
「徐々に値を吊り上げるって事ね……。でもそいつ指名手配中なんだし、出来る事なんて」
「そう見えるでしょ? 実際、別の幹部が覚醒剤の行方を知ってて、その保管場所を吐いたらしいの」
Aは時計を見た。アンシエントが来るまで、まだ少しはありそうだ。
「そいつの話によると、売買をし易くする為に綾薙の中に隠してたらしいの。でも――」
「……そこに、覚醒剤がなかった……?」
Aは震える声で尋ねた。
「そう。外聞を恐れて、来てるのは覆面パトカーと私服警官だけど、普通科では大騒ぎになってる」
「なら何で声潜めて喋ってるのかしら。いずれミュージカル学科にも伝わってくるでしょうに」
鈴音が不思議そうに訊ねる。
「まだ話が見えないの!?」
「? だから何の――」
「この覚醒剤を横取りしたのが、綾薙の生徒なんじゃないかって噂が立ってるのよ!!」
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作者名:月下 | 作成日時:2017年9月30日 23時